編集主幹のダーツの旅

本紙編集主幹 千葉 誠一(ちば せいいち)

本紙編集主幹の千葉誠一が地域ごとの私塾事情を探るため、ダーツが刺さった地域へ赴く新連載!各地域で活躍を続ける塾や、珍しい取り組みを行っている塾などに取材を敢行。ローカルな運営法の中に、塾で生かせるヒントがある!?

いろんな塾のいろんなイマが見えてくる:芦澤 唯志(あしざわ ただし)学院長 「翼学院」(東京都)

【私塾REAL】vol.5 翼学院

障害のある子どもに励まされて開校

千葉 芦澤先生の人生を描いたマンガがありますよね。実に興味深く拝読しました。子どもたちの気持ちに応える形で翼学院が生まれたのですね?

芦澤 私自身がADHDを持っていて、学生時代は不登校で不良で落ちこぼれでした。高校生になって、「これはまずい。何とかしなければ!」と開発した学習法が「芦澤式指導法」のベースになっています。私はこの学習法で、6か月で早慶上智大に現役合格しました。しかし、その後、父の自殺未遂や離婚などを経験してうつ病を発症して仕事もできない状態になってしまいました。そんなどん底の中で、発達障害を持つお子さんの学習支援のボランティアを始めたのです。子どもたちに励まされて元気が出てきたところ、今度は激務が祟って急性膵炎で生死を彷徨いました。そんなときに病室に多数の子どもたちが訪ねてきてくれて励ましてくれました。精神疾患で身体が動かず学校に全く通えなかった子が「僕も先生の指導のお陰で頑張ってマラソン大会で入賞したよ。だから先生も頑張って!」この時に、「子どもたちのために生涯を捧げよう」と決意しました。退院後、葛飾区の居酒屋の裏の小さな教室で「一人ひとりに翼をあげる」のコンセプトのもと、学習困難児・生徒のための塾を開業しました。
 同時期に聴覚障害を持つ息子をシングルマザーとして育てながら看護師・保健師の資格を取得した妻と出会い、「学習指導だけでなく、生活訓練、さらには保護者支援も行っていくワンストップサービスを提供しよう」と意気投合したのです。妻はまさに同志です。

「折り合いをつける」とは?

千葉 芦澤先生は、講演や番組出演で、「折り合いをつける」というお言葉を使われていますが、どういう意味ですか? 最近問題となっている不登校の子を例にお話頂けますか?

芦澤 絶対に学校に通わなければいけない、学校の規則に従わなければいけない、友達と仲良くしなければいけない、「いけない」づくしだと、大人でも苦しくなってしまいます。そんなときに「折り合いをつける」と考えるのです。学校は社会の縮図です。「イヤな事だらけの世の中で」というサザンオールスターズの曲もありますが、「学校を世の中や社会と折り合いをつけることを練習する場」と考えるとお子さんも保護者も気が楽になります。
 私は、「子どもでも大人でも、社会と、他者と、そして何よりも自分と折り合いをつけることが重要だ」と講演など機会があるごとにお話ししています。如何ともしがたい自分の気質と向かい合うときも、自分を責めたり、治そうとするのではなく、「自分と折り合いをつける」と考えるのです。

千葉 なるほど。考えてもみなかった視点で目からうろこが落ちました。ほかに翼学院グループで行っている困難さを抱えるお子さんや保護者への支援はありますか?

和美 たくさんありますが、その中のいくつかの取り組みをご紹介します。翼学院グループでは、専門職による保護者カウンセリングはもちろんのこと、保護者同士でピアカウンセリングする場、必要に応じて学校との調整や行政と連携を図ったサポートも行っています。「死にたい」が口癖で自傷行為を繰り返していた小学5年生の男児を指導をする傍らで、お母さんのカウンセリングと併せて保護者同士で悩み事を相談し合うピアカウンセリングを継続していきました。次第にお母さんの口から家庭での様子を聞くことができるようになり、家庭では食事も与えないネグレクトの状態だったことが判明しました。お母さんは「子どもに触れることができない」と涙を流しました。そこで、お母さんがどのようにお子さんに関わったらよいか、援助を行いました。お母さんが変わっていくに従って、お子さんの自傷行為も少なくなり、明るくなっていきました。そのお子さんは、翼学院とつばさクラブを併用して難関中学に合格をした先輩に憧れて、現在、受験勉強を行っています。

「一人ひとりに翼をあげる」をコンセプトとして命がけで…

千葉 全国の教育関係者に向けたメッセージをお願いします。

芦澤 当社は民間企業として、公教育や社会の問題点と格闘しながら子どもたちを育んでいます。また葛藤している子どもたちや保護者が少しでも理解されるように、ラジオのレギュラー番組や講演活動などを通じて、社会に向けてメッセージを発信しています。全国には同じ志を持って民間教育に取り組んでいる方々がおられることと思います。「すべては子どもたち、それを支える保護者のため」「一人ひとりに翼をあげるため」命がけで、共に頑張っていきましょう!
(2017年3月23日、東京都葛飾区の翼学院高砂校で取材)

芦澤唯志学院長のプロフィール

1967年1月東京生まれ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員、公益財団法人産業教育振興中央会理事、東京商工会議所本部生産性委員などを務める。翼学院グループ学院長(進学補習の「翼学院」、児童発達支援・放課後等デイサービス「つばさクラブ」、NHK学園高校連携教育相談センター「翼学院高等部」、メディア事業部。葛飾区内に4校舎)。「産業と教育」(文科省編集協力・月刊)に連載。FMラジオでレギュラー番組のパーソナリティ、「ナイツのHIT商品会議室」(チバテレビ)で「芦澤式学習法」を伝授。
著書「落ちこぼれでも大丈夫 1か月で偏差値20伸ばす芦澤式学習法」(産学社刊)「サクセス! 一般常識&最新時事」(翼学院著、芦澤唯志監修 新星出版社刊)など

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