編集主幹のダーツの旅

本紙編集主幹 千葉 誠一(ちば せいいち)

本紙編集主幹の千葉誠一が地域ごとの私塾事情を探るため、ダーツが刺さった地域へ赴く新連載!各地域で活躍を続ける塾や、珍しい取り組みを行っている塾などに取材を敢行。ローカルな運営法の中に、塾で生かせるヒントがある!?

いろんな塾のいろんなイマが見えてくる: 大塚 意生(おおつか いさく)代表理事(一般社団法人:貧困家庭の 子どもの学習・進学を支援する全国運動)(東京都中野区)

【私塾REAL】vol.8 キャメル

 貧困家庭の子ども達のため、いま塾に出来ることとは?
全国には、いま326万人の貧困家庭の子ども達が、貧困から抜け出そうともがいている。彼等のために塾が出来ることは何か? 大塚意生氏(日本メディア教育株式会社 代表取締役)が立ち上がった。

平等なチャンスの上で子ども達に努力させたい

千葉 「キャメル」創設のきっかけになったことはどんなことでしょうか?

大塚 私が3歳の時に実父が他界し、母の再婚後、6人兄弟姉妹の貧乏子だくさんの家で育ったことが、一番のきっかけではないでしょうか。

高校時代は朝4時に起きて新聞配達をしてから登校し、大学・大学院時代は、仕送りはゼロでしたから、学費と生活費を自ら稼ぎながら勉強していました。その間、何度も挫折を味わいました。

貧困問題になると、すぐ、「まず自助努力が大切だ」と言う人がいますが、大人はともかく、子どもには酷な話です。子どもは家庭環境を変える力を持ちませんから。まず社会が子ども達に、「平等なチャンス」を保障してあげて、その上で「努力」させるべきではないでしょうか。

生活が困難で、通塾させられない家庭の子ども達も、平等なチャンスが与えられて、貧困の世代間連鎖から抜け出してほしい! 人生を変えてほしい! との願いから「キャメル」を設立しました。

「キャメル」で日本の貧困格差を縮めたい

千葉 日本の貧困率が他のOECD諸国に比して高いのはどうしてなのでしょうか? 先進国、経済大国としてアジア・アフリカ等に経済援助もしているのに・・・。

大塚 ここで言う貧困率とは、一部の発展途上国に見られるような、生きるのに必要な最低限の基準から算出される「絶対的貧困率」ではなく、可処分所得の中央値の半分に満たない世帯員の割合を示す「相対的貧困率」のことです。それでも、収入が平均的な家庭の半分以下なので、子育て中の親は、朝から晩まで働き詰めの状態で、多くの場合、子どもを通塾させる余裕などありません。

日本の貧困率が高いのは、まず、日本で一般的な低賃金のパート労働の問題があります。子育てなどでいったん退職した女性は、なかなか正社員に戻れず、ボーナスも出ない低賃金に甘んじなければなりません。そんな女性が離婚して片親世帯になると、悲惨な状況が待っています。どの国でも「片親世帯の貧困率」は高いのですが、「働いている片親世帯の貧困率」となると、日本は群を抜いて高くなるのです。日本における広汎な低賃金労働が貧困率を高めています。

次に、日本の再配分政策の脆弱さがあると思います。日本人の給与額だけを見れば、主要先進国よりも日本の貧困率は低くなるというデータがあります。しかし、税金や社会保険料などを差し引いたり(控除したり、援助されたり)した後の「可処分所得」で見ると、主要先進国より貧困率は一気に高まってしまいます。なぜでしょうか。それは当然、政府の社会保障給付や税による所得格差の縮小策が脆弱だからです。それを政治家になって是正しようとする人もいるでしょうが、私は「キャメル」を通して、子どもの教育を支援することで、貧困格差を縮めたいと思っています。

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