【吉田 博彦】入学者選抜には、根本的な発想転換が必要。

前回はテストに対する価値などについての欧米と日本の「文化の違い」という話で終わりました。

こうした「文化の違い」は昔から一般的であったわけではなく、欧米でも「一流校ではない大学」では、日本と同じような入学者選抜を行っているところもあります。しかし、これからの新しい時代に向けて、つまり、工業化社会から脱工業化社会、ポスト産業化社会に向けて、次の時代を担う人材育成に向けた教育内容・方法の変化の必要性は世界中で言われていて、そのためにはどのような大学教育が必要なのか、その教育を実現するためにはどのような入学者選考が必要なのかという議論が起きています。

未来に向けてどのような人材育成が必要か

「今の子供たちの65%は、2030年代以後に大学卒業後、今は存在していない職業に就く」、「今後10~20年程度で、約60%の仕事が自動化される可能性が高い」、「2030年までには、週15時間程度働けば済むようになる」という「来るべき未来社会像」は、今回の日本の大学入試改革や学習指導要領の改訂の枕詞となっていますが、これは日本だけではなく、世界中で行われている教育論議です。こうした「来るべき未来像」に向けて、どのような人材育成が必要なのかという問題意識から今回の入試改革は起こったもので、その問題意識は欧米も日本も同じなのです。

その議論の結論から、欧米の主だった大学では、現在の大学入学者選抜の方式を発想力・構想力評価、人物評価、非認知的能力評価などを入学者選抜の中心に置くようになりました。新聞などでも報道されているように、オックスフォード大学やケンブリッジ大学の論文試験で「火星人に人間をどう説明しますか」や「カタツムリに意識はあるか」などの出題がその象徴です。ハーバード大学の一部学部やいくつかの米国の大学では「SATなどの学科試験は使わない」という入学者選抜方針が出され、選択問題を基本とした短絡的知識偏重型の入学者選抜は姿を消しつつあります。

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吉田 博彦(よしだ ひろひこ)

教育支援協会 代表理事

1952年 大阪府枚方市生まれ。中高と神戸で育ち、1976年早稲田大学法学部卒業後、海外子女教育、インターネット教育事業などを行う民間教育会社の経営にあたる。

1997年、「教育支援協会」の設立に参画し、99年、教育分野で最初のNPOとして経済企画庁(当時)の認証を受け、全国組織のNPOの代表理事に就任。また、2003年に特定非営利活動法人小学校英語指導者認定協議会専務理事、2015年に特定非営利活動法人全国検定振興機構理事長に就任し、英語教育の改革や大学入試改革に取り組んでいる。

yoshida

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【2017/8月】【吉田 博彦】我国の「テスト文化」 という神話 ・・・「試験は公平という 思想」の終焉に向けて

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