【山口 時雄】第14回 私立小中高の1人1台端末は何を選べばよいのか②
予想外に必要になりそうなキーボードのタイピング能力
大学の先生が「最近の学生は、理科系に入学してきてもろくにパソコンのタイピングができない」と嘆く。
でも、学生たちは「高校生のほぼ100%はスマホを持っているし、普段の生活でも授業や情報収集にも使っているし、キーボードよりも文字を打ち込むのだって早い。いずれワープロは音声認識で話せば書ける時代になるのだから、タイピング技術なんてさほど重要な能力だと思わない」と言うだろう。確かに、科学技術の進歩、とくにAI系の進化の速さを考えれば、キーボードの必要性など無いのかもしれない。
しかしここで、現在でも未来でもない少し先、2020年から教育界で起こる重要な変革に目を向けたい。それは、「大学入試改革」である。センター試験は廃止され、「大学入学共通テスト」が導入される。2020年の変化としては「国語・数学における記述問題」と「英語の4技能評価」。
中でも英語については民間試験の導入が検討されている。採用の前提としては、「現に民間事業者等により広く実施され、一定の評価が定着している資格・検定試験を活用する」としている。何になるかはまだ決まっていないが、CBTが導入される可能性がある。
CBT(Computer Based Testing)とは、コンピューターを利用して行う試験のこと。紙を利用した試験と異なり、受験者ごとにランダムな問題を出せる、利用者の好きなタイミングで受験できる、瞬時に採点できるなどの利点がある。英語の資格・検定試験であり評価が定着している「英検」や「TOEFL」などでも既にCBTを導入しており、教室での一斉放送による音声聞き取りの問題や採点の手間などを考慮すると、CBTの活用は現実的と言える。
そうなれば、学力はもちろんだがタイピング能力が採点に大きな影響を与える。解答が分かっていても、タイピングで書き切れなければ採点されることがないからだ。記述式の問題が増えれば、採点方法が課題となる。人力で行うのがこれまでのやり方だが、AIを活用すればより短時間に採点ができるようになり、記述式問題の導入もしやすくなる。そのためには、CBTを使ったテストにする必要がある。ますますタイピングの必要性が高まる。少なくとも中高では、キーボード付きの端末は必須デバイスである。
