嗚呼!華の応援団~第48話~
いたずらな風に煽られた大太鼓は、ふわっと宙に浮いたのだ。
そこからはまるでスローモーション。
アルプススタンドの最上段から、まるで転げ落ちるようにバウンドしながら、ゆっくりゆっくりと落ちていく…。
その後ろをおさむちゃんが追いつくはずもないのに、ガニ股走りで追いかけていく。
すべてがテレビ画面のスローモーションのように。
まるで「金八先生」の「腐ったみかんの方程式」で、まさるが警察に捕まるシーンのごとく。
BGMは中島みゆき。
太鼓は結局、最下段まで転がり落ちて、金網に当たって止まった。
おさむちゃんは、途中のスタンドで死んだ蛙のように倒れている。
ありえない。団の象徴である太鼓がこんなことになるなんて、絶対にありえない。
一瞬、同志社側のアルプススタンドは凍りつき、無人のごとく静まり返った。
この後のことはまったく覚えていない。
そのまま応援を続けたのかどうかさえ。
試合が終わって、集合がかかった。
M三回生「黙想!歯ぁ食い縛れっ!」
ボコッ!ドカッ!握り拳で殴られた瞬間、ある現象が…。
よく漫画とかで、殴られて火花が飛んでいる絵があるでしょ?
あれって、漫画だからだと思い込んでた。
違うんだよね。
ホントに火花って飛ぶの。
瞬間、ホントに「バチバチッ!」って音がして、火花が飛んだんだからぁ!
私たち二回生は全員が脳震盪を起こし、その場で気絶した。
後にも先にもこんなに思いっきり殴られたのは、この時だけだったさ。
そして、あのシーンだけは今も時々、私の夢に出てくるんだ。
おさむちゃん、やっぱあんたすごいわ。またまた【おさむちゃん伝説】に新たな1ページが加わった。
クエッ、クエッ。
続く〉
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次回配信は12月27日を予定しております。