【森上 展安】新しい学習指導要領で中学入試はどう変化するか

算数入試の現状

例えば、算数入試において、受験生は今どういう状況にあるかといえば、多くの受験生は解き方を覚えようとしてはいても、考えて解こうとはしていないのが実情だ。

それは中学受験という社会的現象がかつての中小塾を中心とした世界から、現在のような産業化した塾企業を中心に担われるに至った結果の事態と無縁とは言えない。というのも、入試問題が塾産業によって年々編集されテキスト化され、出題パターン分類が膨大に、精緻に展開されているため、そのカバーに追われているということが大きい。

しかも、そのカリキュラムは依然として伝統的カリキュラムであって、簡単に言えばこういう項目でこういう問題が出たよ、と問題を並べたカリキュラムだ。例えば「数学」のようには近代的カリキュラムつまり体系化されていないから、思考のエッセンスを抽出するということが難しい。

これは三重に不幸なことだが、まずは受験生の負担が大きい。勿論、よくできる受験生にとっては問題は少ないが、要は中堅以下の受験生にとって算数は考えて楽しい科目という以前のあり方から今は覚え込む楽しくない科目という受け取りが多くの受験生の実感になっているのではないだろうか。

次いで不幸なのは入試を出す中学の側で、作問に必要な類題はそれこそ五万とあるのだが、以前のようなやや難度のある問題をむしろ中堅校以下では出せなくなってきていることだ。また、残念なことはまだまだ高倍率時代の慣習で入試をして合格者を決めるまでで多くの学校は疲労してしまい(3回以上入試をすることが中堅以下では普通に行われている)、受験生の得点状況まで分析できているところは多くない。そのため、受験生の学力の見極めが十分できないままで、目的は学力選抜であるものの、どちらが主かと言えば量的な選抜(相対評価とは量を測定する)にしかなり得ていない。即ち(中堅以下では)学力のバラツキが大きい選抜になっている。

一方で、本来の、入学して彼らに要求される基本的な講義を聞く力を験すことさえできないでいる(これを鮮やかに突破したのが宝仙理数インターのリベラルアーツ入試だ)。算数はとりわけ積み上げ要素の多い科目だから、基本的前提的な知識・理解について一定ラインに達している。つまり、スタートラインが同じであることに越したことはないが、それが仮に多少バラツキはあったにせよ、授業を受けられる一定の読み書き能力の前提はなくてはならない。

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森上 展安(もりがみ のぶやす)

1953年岡山県生まれ。早稲田大学法学部卒業。

東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾「ぶQ」を経営後、88年に(株)森上教育研究所を設立。中学受験、中高一貫の中等教育を対象とする調査・コンサルティング分野を開拓した。

私塾・私学向けに『中学受験と私学中等教育』を月刊で発行している。中学受験生の父母対象に「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」セミナーをほぼ毎週主催。著書に『10歳の選択 中学受験の教育論』、『中学受験入りやすくてお得な学校』(いずれもダイヤモンド社刊)。

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