【吉田 博彦】大学入試改革各論1 ― 記述問題の導入 ―

2020年度大学入試から、現在の大学入試センター試験を、「新テスト」と言われる「大学入学共通テスト」に変更する中で導入される記述式問題についてまとめてみます。

まず、なぜ「新テスト」に記述式問題を導入することになったか。それは2020年度から施行される新指導要領の中で「学力の三要素」という考え方が示されたためです。「ゆとり教育批判」以来、これまでも「学力とは何か」という議論が日本の教育界では盛んに行われてきましたが、その議論に文部科学省が一定の結論として示したのがこの「学力の三要素」という考え方で、①「基礎的・基本的な知識・技能」、②「①を活用して課題を解決するための思考力・判断力・表現力」、③「主体的に学習に取り組む態度」となっています。

現大学入試制度の原型とは

この「学力の三要素」という言葉は文部科学省の中央教育審議会初等中等教育分科会の教育課程部会内に設置された「児童生徒の学習評価の在り方に関するワーキンググループにおける審議のまとめ」(平成22年3月)の中で初めて使われたのですが、その後、次期学習指導要領の中核的な指針となりました。そして、その考え方を全ての教育現場に浸透させるためには「大学入試を変えなくてはいけない」という問題意識から、約50万人という世界でも稀な大量受験者を対象とする「新テスト」に記述式問題を導入するということに踏み切ったのです。

本当にできるのか?採点はどうするんだ?合否判定の時間的に間に合うのか?など課題が山積していることは間違いありません。しかし、大学入試で大きな比重を占める「新テスト」が現在の大学入試センター試験と同じ選択問題のみなら、教育現場に「学力の三要素」は定着せず、①「基礎的・基本的な知識・技能」の習得が中心で、「指示されて学習に取り組む態度」を育成する教育をこれからも続けることになってしまいます。これでは今の子どもたちが生きていく21世紀という時代の大きな変化には対応できません。

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吉田 博彦(よしだ ひろひこ)

教育支援協会 代表理事

1952年 大阪府枚方市生まれ。中高と神戸で育ち、1976年早稲田大学法学部卒業後、海外子女教育、インターネット教育事業などを行う民間教育会社の経営にあたる。

1997年、「教育支援協会」の設立に参画し、99年、教育分野で最初のNPOとして経済企画庁(当時)の認証を受け、全国組織のNPOの代表理事に就任。また、2003年に特定非営利活動法人小学校英語指導者認定協議会専務理事、2015年に特定非営利活動法人全国検定振興機構理事長に就任し、英語教育の改革や大学入試改革に取り組んでいる。

yoshida

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