【大村伸介】ゆるゆるに緩めてみる

年の瀬も近づいてまいりました。この時期になると、私は必ず思い出すある女性の方がいます。

その女性は、Tさんです。Tさんとは教育コーチ養成講座で出会いました。その講座でのセッション中の出来事です。

「やろうと思いながらやっていないこと」

セッションのテーマです。年の瀬も近づいた時期でしたので、Tさんは、大掃除を真っ先に挙げられました。セッションをするにつれ、Tさんからは、

「年末には大掃除をしなければならない」

「新年はきれいな状態で迎えなければならない」

そんな思い込み、信じ込みが聞こえてきました。

「年末には大掃除をしなければならないとは限らない、と3回言ってみてください」

「新年はきれいな状態で迎えなければならないとは限らない、と3回言ってみてください」

Tさんの思い込み、信じ込みがどうなるか、興味と関心で関わりました。

そして、Tさんは大掃除をどんなものとして捉えているのか、質問しました。

「大掃除とは、私ひとりですべきものだ」

うつむき加減に、聞き取れるか聞き取れないかの呟きとして、言いました。

「大掃除とは、私ひとりですべきものだとは限らない、と3回言ってみてください」

私のこのリクエストにTさんは、きっと私を見据え、そして大きな声で言いました。

「そんなこと、言えるわけないでしょ!だって、家族は誰も手伝ってくれない。みんな自分のことばっかりで、家のことなんかどうでもいいって感じ。家族は私のことなんか家政婦としてしか見ていないんですよ!」

口を真一文字に結び、がくがくと震えているTさんがいます。

「いま、Tさんの中に何がありますか」

5分くらいの沈黙の後、静かにTさんはこう言いました。

「悲しみがあります。私は家族のためを思って、精一杯やっているつもりです。でも、家族は私のことなんかどうでもいい、私は家族に必要とされていないんです」

必要とされていないと感じながら、精一杯やっているのは、何があるんだろう、という興味と関心のもと、私はこう聞きました。

「何のために、やってるんですか」

最終的にTさんの口から出てきた言葉、それは、

「家族に愛されたいからです」

というものでした。

そして、Tさんに質問をします。

「本当は今の関係をどうしたいですか」

私がこう聞いたところで、セッションはタイムアップになりました。

その後のセッションを振り返る時間で、Tさんはこう言いました。

「自分の中で、普段意識していないことが口から出てきて驚きました。本当にどうしたいのか、考えてやってみます」

その言葉を発しているTさんに

「目の力が少し抜け、何とも言えない穏やかな表情ですね。私も嬉しくなりました」

こうフィードバックしました。

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大村 伸介(おおむら しんすけ)

(株)成基総研 コーチング室 室長

集団指導塾を経て、2004年株式会社成基入社。

教室長、エリアマネージャー、本部長補佐、副本部長を歴任。

現在は、教育コーチング、パパママコーチングセミナーのトップ講師として教職員研修、保護者講演会等で全国を飛び回る。

日本青少年育成協会認定上級教育コーチ・認定A級トレーナー、主任研究員

ohmura
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