【吉田 博彦】CBTの導入とその課題

大学入試改革の2020年以降の課題

 この紙面でこれまで書いてきたように、進められている大学入試の改革は新テストが導入される2020年度が一つの節目になります。ただこれはあくまでもキックオフに過ぎず、今回の大学入試改革はそこで完了するわけではありません。2020年4月より新指導要領に基づく教育が小学校から暫時スタートし、2021年4月に中学校で、2022年4月には高校で、という形で新学習指導要領に基づく教育が始まっていきますから、その2022年4月に入学した生徒が大学受験に向かう2024年度には、新学習指導要領で新設・再編される科目に基づくものに入試はリニューアルされます。この段階で新学習指導要領にあわせた大学入試となるのです。

 今回はこの2024年度からの入試に向けて準備が進んでいるCBT(Computer Based Testing)の導入とそれ以降の入試改革の将来も含め、今後の課題を整理したいと思います。

CBTの導入

 CBTの導入については、文部科学省が高大接続改革の方針でも示していますし、2024年度実施に向けて大学入試センターでも研究開発が進んでいます。

 CBTというのは紙ベースではないので、動画を使ってテストができるとか、あるいはその受験者の学習の進度に応じて測定ができるとか、現在のペーパーテストのできないような能力測定をできる可能性があります。そして、これが実現すると、大量のテスト問題が電子媒体としてストックできるようになり、そこに蓄積された多様なテスト問題の分析から、「問題Aと問題Bは同等の能力を測定できる問題群に位置する」という「テストの等化」が進めば、年複数回実施や資格試験化も可能になります。

 こうした大量のテスト問題がストックされる「アイテムバンク」を作り上げれば教育現場での評価・測定の問題は一気に改善される可能性があります。

 もちろん、課題は山積しています。少子化が進み大学入試の受験者が減ったとしても、現在のセンター試験の受験者は56万人もいますので、こうした大規模型のテストに受験者一人ひとりがコンピュータを使って受験するCBTを導入するというのは容易なことではないと誰にでもすぐわかると思います。自分のコンピュータやタブレットを持ち込んでテストするわけにはいきませんので、1年に一度しか使わないコンピュータをずっと大学で保管しておいて、そのとき急に出してきて使っても、おそらく不具合が大量に発生するでしょうから、「どのように受験するのか」という問題が一番大きな課題です。

 次に大きな課題は、CBTの解答結果データは電子データですから、通信でデータを送っているときなどにデータが消失したり、外部に流出したりする危険性もあります(試験問題を通信で送る場合も同様の課題があります)。こうしたセキュリティーの問題はネット社会の大きな課題です。

 他にもいろいろと課題はあります。端末機器は日進月歩で新しくなりますから、それに要するコストも考える必要があります。生徒からすると、試験実施時のテスト問題の読みやすさや解答のしやすさは紙ベースのテスト(PBT)の方を選ぶでしょうし、キーボード入力技術の差が出るという批判もあるでしょう。しかし、そうした多くの課題があるとしても、世界のテスト環境はCBTに向かっていますから、文部科学省の担当者も相当な覚悟で検討を進めています。

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吉田 博彦(よしだ ひろひこ)

教育支援協会 代表理事

1952年 大阪府枚方市生まれ。中高と神戸で育ち、1976年早稲田大学法学部卒業後、海外子女教育、インターネット教育事業などを行う民間教育会社の経営にあたる。

1997年、「教育支援協会」の設立に参画し、99年、教育分野で最初のNPOとして経済企画庁(当時)の認証を受け、全国組織のNPOの代表理事に就任。また、2003年に特定非営利活動法人小学校英語指導者認定協議会専務理事、2015年に特定非営利活動法人全国検定振興機構理事長に就任し、英語教育の改革や大学入試改革に取り組んでいる。

yoshida

▼『吉田博彦』の過去記事を読む

【2018/1月】大学入試改革各論2 ― 英語4技能化問題 ―

【2017/12月】大学入試改革各論1 ― 記述問題の導入 ―

 

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