【森上 展安】難化なき増加という首都圏私立中学入試の新局面

2019年入試 2.4%以上増か

 2018年4月に行われた大手塾の4つの模試の受験者数は前年比で5%増になり、自然増(3.5%)に加えて、中学受験ニーズが高まっていることを改めて示した。

 そうなると受験生にとって心配なのが、「難化」「倍率増」で、志望校により入りにくくなるのではないか、という懸念が強まる。実際、上記のうち、「倍率増」は本当で、今春の中学入試は2.7%の増加(小社集計)だったが、男子と女子の上位校の倍率激化が進んだ。いずれも昨年まで緩和していたところが多かったので、それだけに着目すると旺盛な中学受験ブームの再来の観を呈した。

 来春はさらに少なくも2.4%(4月受験者増が5%であったことを織り込んでの最終的な入試時点での増加は最低でその程度と予想)増にはなりそうなので、この増加分がどのような増加模様をもたらすのか受験生のみならず学校も気になるところだ。少なくとも今年のように男女校の上位校がさらに増加するのかどうか。

 ところが4月大手模試の増加傾向が明らかになっていると同時に、もう1つの傾向も鮮明になった。それは即ち、難化校がほとんどない!という新事態だ。

 というのも大手模試の4月では、各模試で来春入試の予想偏差値が出される。筆者は、この大手模試のうち、サピックスと四谷大塚について確認したところ、易化校も難化校もあるにはあるが、極めて少なかったのだ。

 これは実は予想偏差値のもととなる今春の入試結果から導いた結果偏差値をもとにしているので、そもそも今春入試での結果偏差値が難化も易化もあまりしなかった、という実情があるからだと推測できる。

難化しない!?来春入試

 つまり、受験生が増えて恐らく倍率も上昇するところが多勢と見込まれる来春入試で、もちろんいくつかの例外校はあるが、今春入試より偏差値が2ポイント以上難化するという可能性のある学校はあまりなさそうだし、それは今春の入試でもそういうことが結果として言えた、ということである。

 受験生増が難化に直結しないのは、考えられるのは埼玉入試や千葉入試にみられるように、合格しても手続きしない受験生をおりこんで倍率が極端に高くならないように合格者を多く出すような調整をすると、難度も上がりにくい。それは受験生が10%増えても合格者も同じくらい増やすことで昨年と同じ倍率として、結果的に偏差値も変わらないという形である。もちろん、埼玉、千葉のみならず、東京、神奈川の午後入試でよくみられる対応であるし、何よりも適性検査入試でとられる手法だ。近年、中学入試は午後入試と適性型検査入試(を含めて新しいタイプの入試も)が年々多くの受験者を集めていることも事実で、受験生数の増加分がこうした難度に影響を与えない入試に流れている、という一面も見逃せない。つまり入試の多様化がまちがいなく「難化なき増加」の原因の一つであろう。

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森上 展安(もりがみ のぶやす)

1953年岡山県生まれ。早稲田大学法学部卒業。

東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾「ぶQ」を経営後、88年に(株)森上教育研究所を設立。中学受験、中高一貫の中等教育を対象とする調査・コンサルティング分野を開拓した。

私塾・私学向けに『中学受験と私学中等教育』を月刊で発行している。中学受験生の父母対象に「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」セミナーをほぼ毎週主催。著書に『10歳の選択 中学受験の教育論』、『中学受験入りやすくてお得な学校』(いずれもダイヤモンド社刊)。

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