【吉田 博彦】2020年学習指導要領の内容と課題(2)

小学校英語と中学・高校英語の関係

新学習指導要領から小学校英語が教科になるため、その対象となる小学校5年、6年では2011年からの「小学校英語活動」は「小学校英語教育」と名称が変わる。しかし、小学校3年、4年については、現行のまま「小学校英語活動(正式には小学校外国語活動)」である。この名称の違いは「小学校英語活動」が「体験学習としての英語学習」であるからだ。あくまでも「体験学習」であって、日本の英語教育体系の中で規定され、学習内容が学習指導要領で決められることはなかった。

そのため、これまで小学校5年、6年は「小学校英語活動」を行ってきていたので、中学・高校の英語教育との直接の関係はないとされてきた。しかし、今後は教科となり、「小学校英語教育」として指導されることになるので、中学・高校の英語教育との繋がりが強く意識される必要がある。その一つの大きなテーマが「全て英語で指導する」という指導方法である。

高校英語については2013年から学習指導要領が改訂され、授業は全て英語で指導することとなっており、高校で新学習指導要領が施行される2022年以後もそれは変わらない。現在、多少の混乱はあるものの、「全て英語で指導する」という高校の英語教育の姿は具体化し始めており、2020年の新学習指導要領の施行時には中学校の英語の授業も英語で行われることになる。こうして、「全て英語で指導する」という指導方法は小学校からスタートして中学・高校の英語教育へと繋がっていくことになる。

こうした小学校段階における英語活動から英語教育への変化の全体像がわかるように、文部科学省の新旧の学習指導要領解説を使って、小学校英語教育と中学・高校英語教育のつながりをまとめてみる。なお、重要なところには下線をつけておく。

「小学校から中学校・高校段階における外国語活動」

●社会や経済のグローバル化が急速に進展し、異なる文化の共存や持続可能な発展に向けて国際協力が求められるとともに、人材育成面での国際競争も加速していることから、学校教育において外国語教育を充実することが重要な課題の一つとなっている。

●国際的には、国家戦略として小学校段階における英語教育を実施する国が急速に増加している。例えば、アジアの非英語圏を見ると、1996年にタイ、97年には韓国、2005年には中国が必修化を行っている。また、フランスにおいては2007年から必修化されている。

●我が国においては、これまで外国語教育は中学校から始まることとされてきており、中学校において挨拶、自己紹介などの初歩的な外国語に初めて接することとなっていた。しかし、こうした活動はむしろ小学校段階での活動になじむものと考えられる。

●また、中学校外国語科の指導において、聞くこと及び話すことの言語活動に重点を置くこととされているが、同時に、読むこと及び書くことも取り扱うことから、中学校に入学した段階で4技能を一度に取り扱う点に指導上の難しさがあった。

●こうした課題等を踏まえれば、小学校段階で外国語に触れたり、体験したりする機会を提供することにより、中・高等学校においてコミュニケーション能力を育成するための素地をつくることが重要と考えられる。

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吉田 博彦(よしだ ひろひこ)

教育支援協会 代表理事

1952年 大阪府枚方市生まれ。中高と神戸で育ち、1976年早稲田大学法学部卒業後、海外子女教育、インターネット教育事業などを行う民間教育会社の経営にあたる。

1997年、「教育支援協会」の設立に参画し、99年、教育分野で最初のNPOとして経済企画庁(当時)の認証を受け、全国組織のNPOの代表理事に就任。また、2003年に特定非営利活動法人小学校英語指導者認定協議会専務理事、2015年に特定非営利活動法人全国検定振興機構理事長に就任し、英語教育の改革や大学入試改革に取り組んでいる。

yoshida

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