【林 隆樹】グローバル人材の必要性と実態

― 保護者を満足させ受験を見据えた海外留学のすすめと取り組み方 ―

今回の連載の終盤に向けて

 さて、2016年9月から「グローバル人材の必要性と実態」のタイトルのもと、主に「高校生の長期交流プログラム(アウトバウンド・インバウンド)」とは何かということを中心に、中高生の教育に関わる方々に向けて23回に渡って発信してきました。

 「教えるとは希望を語ること、学ぶとは誠実であること(Enseignerc’estdireesperanceEtudierfidelite)」とはフランスの詩人ルイ・アラゴンの有名な詩(ストラスブール大学の歌)の一節で、教育に関わる方々にとっては親しみ深い言葉かと思いますが、ましてその教育に関わる皆様に発信してきたことは、文字通り、これからのさらなる混迷の時代に、あるべき教育を共に模索していただければという、連帯を切に求める気持ちでした。

「世界に日本が存在してよかったと思う時代」のために

 結論から言えば、もちろん教育は国家100年の計であり、あらゆる面において重要テーマが充満しているわけですが、この「グローバル」という切り口から考えると、急務の事柄は外国語コミュニケーション能力習得はもとより、グローバル社会という概念の習得とその対応ということになり、その方法の1つとしての「高校生の教育交流プログラム」を中心にお話をしてきました。その中であらためて課題と感じる事柄は下記になるでしょうか。

 教育交流プログラム(アウトバウンド、インバウンドを含めた)の理解・普及、つまりは、今年の6月号でお話したことの繰り返しになりますが、世界200ヶ国の中の1つの国である日本ということ、即ち、海外の国々と関わらないかぎり日本国が成り立っていかなくなるということ、その教育のための「グローバル科」と「日本科」を作る、ということになるかと思います。
この中で、これは想像の域を出ませんが、もしかすると、英語で英語を教える授業よりも、困難なのではないかと思えるのが「日本科」です。

 いくつかのポイントに集約はできるかと思いますが、あまりに、日本文化は多岐にわたっており、それをどの様に体系化して、どのように学年別に教えていくかということは、専門家・学者にとっても、狭く深くそれぞれの専門分野が細分化し過ぎており、総合的に日本とは何か?ということを体系的に纏めることはかなりの難事業であるように思います。

 これはほとんど伝説で、その効果の真偽がどの程度であるかわかりませんが、日露戦争時に、戦争遂行を有利にするべく、日露戦争不介入を掲げていたアメリカに派遣された金子堅太郎はその日本広報外交に成功します。

 その理由は2つ、1つ目は、彼は18歳から7年間アメリカに留学し、ハーバード大学を卒業するわけですが、留学中に後に第26代アメリカ大統領になるセオドア・ルーズベルトと友人となっていたこと。2つ目は、既に大統領になっていたルーズベルトの「日本をアメリカ国民に理解させるために、日本についてどう説明すればよいか?」との問いに、金子は新渡戸稲造の「武士道(Bushido:TheSoulofJapan)」を予め携えて行ってルーズベルトは一晩でそれを読み理解したということです。

 もちろん、現在の日本を紹介するのに、あるいは学ぶのに、事はそれほど単純ではないわけですが、日本とは何か?をなんらかの方法で説明することがいかに重要であるかはうかがえます。

 我々の教育現場は既に動いており、差し迫っています。来週にも留学する生徒が、海外で日本について尋ねられて、直面する問題でもあります。

 そして当然、行政の日本科創設にはまだ時間がかかるように思われます。

 この新聞の読者であるご見識高い皆様方には、すでによくご存じの方々も多いかとは思いますが、先ず、日々教育に関わる我々が、実は急務であるこの分野でとりあえず、どこから手を付けていけばよいかをご紹介しておきましょう。行政が遅れていれば、官を恃まず、まず我々で勉強するしかありません。

1 2

林 隆樹(はやし りゅうき)

(一社)日本青少年育成協会 理事・国際交流委員会委員長

1956年東京都生まれ。早稲田大学大学院在学中にフランスに1年間留学、帰国後翻訳会社に勤務。

1992年、サンフランシスコに本社を持ち、世界各国に展開する英語学校の日本支社長に就任。

以降、留学業界で活躍。2001年社団法人日本青少年育成協会国際交流委員会、2004年より同協会理事に就任、現在にいたる。

2000年より一般社団法人JAOS海外留学協議会事務局長、2013年より専務理事。

2011年、一般社団法人J-CROSS留学サービス審査機構の立ち上げにかかわり同機構理事。

2014年より、特定非営利活動法人文際交流協会理事。2017年より学校法人イーストウェスト日本語学校理事。著書に「成功する留学、交換留学編」(共著)などがある。

hayashi

▼『林隆樹』の過去記事を読む

【2018/7月】グローバル人材の必要性と実態

【2018/6月】グローバル人材の必要性と実態

 

   ≫さらに読む