【林 隆樹】グローバル人材の必要性と実態

― 保護者を満足させ受験を見据えた海外留学のすすめと取り組み方 ―

日本的な世界観の例

 前回は最後に、司馬遼太郎の講演『踏み出しますか』を挙げて、「日本が高度成長を遂げ経済的にも成功して世界に係らざるを得なくなって来た90年代に、日本の文化・歴史を踏まえて、どのようにグローバル化に対応していくべきなのかを語っており、30年近くも前に、今日、依然として我々が直面している、日本の安全保障問題、移民問題、貿易自由化問題等が考えられ、日本が拠り所にするべき哲学とは何か?が示唆されています」と締め括りましたが、何人かの方々から、「その日本が依って立つべき哲学とは何なのか?」とお問合せをいただきました。もちろん、お読みいただければよいわけですが、引用した責任上、少しご紹介をしておきましょう。

続「世界に日本が存在してよかったと思う時代」のために

司馬遼太郎はこんな風に語っています。

 「私の話は、ほとんどためらいの連続です。日本人がもし腰をいれて世界の組合員になる気なら、いまの日本の場合、文明の責任をもたなければなりません。

 ふるくからの先進国-イギリスやフランスのような-は、内心、滑稽さを感じて、「日本に、それをやるだけの哲学があるのかね?」とささやくかもしれません。

 じつは、日本には、そういうものはあるんです。

 牢固としてあります。唐突のように思われるかもしれませんが、華厳の哲学です」。

 華厳の哲学というのは、日本人が大好きだった大日経、仏説阿弥陀経などに入っている思考法もしくは世界把握法です。いまは俗哲学として日本人の血肉の中に入っています。キリスト教のような絶対者がいる思想ではなく、世界を相対的なものとして、それが光明の根源に総和されているという考え方です。光明を鑚仰、万物は、お互いさまという思想です。みな関連しあって、小は原子や分子のレベルから大は宇宙にいたるまで、すべてがお互いのおかげで生かされている、という考え方であります。

 「華厳の哲学」として彼はここではさらっとコメントしているだけなのですが、実は大変なことを語っています。これだけでは少し解かり難いかもしれませんが、これも以前から述べている「日本科」の創設の必要の所以であるかと思います。私に簡潔に華厳哲学について解説する能力はありませんが、華厳哲学という世界の理解の仕方についての一例を挙げておきましょう。

 例えばその考え方のひとつに「重重無尽」即ち、「世界は全て密接に関係し合い(重重)、果てしなく(無尽)繋がって構成されている。」という考え方があります。「全てが支え合っている」と考えてもいいかもしれません。まあ、そうなると、世界に不要なものは無くなってしまうのですが…。

 一般的な例は「1粒のお米の話」でしょうか。俗に「お米という文字は八十八と書いて、八十八人もの多くの人々のおかげでいただくことができる。」と言ったりします。

 今、目の前に「1粒のお米」があったとします。

 金銭的な価値はほぼ皆無でしょう。しかし、この米粒は突然出現するはずはなく、ある意味当然、さかのぼれば無限(無尽)に宇宙の歴史のはじめにまで遡ることができます。また、人事についても、運んできたトラックを見れば、自動車の発明から、トラックが走れるための道路、その舗装、信号機、それらを作成した方々とそのご先祖等々、縦横に無限に関係していきます。唯一の絶対者がいるわけではなく、全てのものが関わり合い、支え合いして世界は構成されているという考え方です。

世界・宇宙は全て関係し合い、支え合っているという真理の象徴としての毘盧遮那仏

 建立以来、千二百数十年の奈良の東大寺は華厳宗の総本山です。あの毘盧遮那仏(大仏)は唯一神でもなく、絶対者でもなく、「全ては繋がっているという宇宙の、その宇宙に充満しているということ(真理)」の象徴としてあります。

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林 隆樹(はやし りゅうき)

(一社)日本青少年育成協会 理事・国際交流委員会委員長

1956年東京都生まれ。早稲田大学大学院在学中にフランスに1年間留学、帰国後翻訳会社に勤務。

1992年、サンフランシスコに本社を持ち、世界各国に展開する英語学校の日本支社長に就任。

以降、留学業界で活躍。2001年社団法人日本青少年育成協会国際交流委員会、2004年より同協会理事に就任、現在にいたる。

2000年より一般社団法人JAOS海外留学協議会事務局長、2013年より専務理事。

2011年、一般社団法人J-CROSS留学サービス審査機構の立ち上げにかかわり同機構理事。

2014年より、特定非営利活動法人文際交流協会理事。2017年より学校法人イーストウェスト日本語学校理事。著書に「成功する留学、交換留学編」(共著)などがある。

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