【吉田 博彦】英語教育の改革(1)

2002年の新学習指導要領と英語教育改革

 先月号で2002年4月の学習指導要領の改訂時の教育政策論議の混乱について述べたが、その時の学習指導要領の改訂で中学・高校の英語が必修になったことはあまり知られていない。それまでは中学・高校の英語は選択科目であったが、2002年の新学習指導要領の議論は国際化への対応がテーマとなっており、当然のように小学校から大学までの外国語教育のあり方が議論された。その結果、実質的には必修科目化していた中学と高校の英語を正式に必修科目にすることとなったのである。

 問題は小学校での英語をどうするかということで、議論は白熱したが、「授業時間をどう確保するのか」、「指導者問題をどうするのか」などの大きな課題があり、結局、新学習指導要領で新設される「総合的な学習の時間」で英語活動も行うことができるとして、小学校英語自体の必修化については見送った。「総合的な学習の時間」は学校現場の判断で週3時間を自由に活用できるので、小学校英語活動として「やりたいところはどうぞ」という形で、やるかやらないかの判断は現場に投げられたのである。

 2002年4月に施行された学習指導要領は嵐の中の船出であった。施行された後も、2003年のPISA調査の結果で国際的な順位が低下していたこともあって、再び学力低下論争が巻き起こり、2002年4月の学習指導要領は常に「ゆとり」教育批判にさらされた。この論考では先月までに2002年の学習指導要領改訂の流れをまとめてきたが、この流れを正確に理解しておかないと、2020年に予定されている新学習指導要領の抱える課題を理解できないと思う。

 なぜなら、マスコミの報道では2011年からの新学習指導要領は「ゆとり」教育から脱「ゆとり」教育への変更と単純に伝えている。学校現場ではその中で小学校外国語活動が登場したため、小学校外国語活動は脱「ゆとり」教育の象徴と受け取られているということがあるからだ。それに対する正確な理解をするために、ここでは2020年からの新学習指導要領で教科となった小学校英語や英語教育改革の全体についてまとめてみる。

 先月号でも述べたように、日本において小学校段階での英語教育の必要性が提示されたのは臨時教育審議会の第2次答申の時である。しかし、そのあとも議論は続けられたものの、1992年の新学習指導要領では「小学校段階では英語よりも国語が大切」という声に押し返され、小学校英語教育の必修化は実現されなかった。

 小学校英語教育の必修化議論はこの後も10年以上続いて、国民全体の英語力を高める中で、いかに英語運用能力の高い人材を増やすかという視点から「英語指導方法等改善の推進に関する懇談会」が文部科学省に開設されたのは2000年のことだった。

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吉田 博彦(よしだ ひろひこ)

教育支援協会 代表理事

1952年 大阪府枚方市生まれ。中高と神戸で育ち、1976年早稲田大学法学部卒業後、海外子女教育、インターネット教育事業などを行う民間教育会社の経営にあたる。

1997年、「教育支援協会」の設立に参画し、99年、教育分野で最初のNPOとして経済企画庁(当時)の認証を受け、全国組織のNPOの代表理事に就任。また、2003年に特定非営利活動法人小学校英語指導者認定協議会専務理事、2015年に特定非営利活動法人全国検定振興機構理事長に就任し、英語教育の改革や大学入試改革に取り組んでいる。

yoshida

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