【吉田 博彦】英語教育の改革(2)

2020年からの新学習指導要領へ向けて

2002年の学習指導要領改訂で設けられた「総合的な学習の時間」の中で「小学校英語活動」という形でスタートした小学校での英語教育。日本PTA連合会の2004年当時の調査では80%近くの保護者が「小学校での英語教育」の実施を望んでおり、「総合的な学習の時間」の中で多くの学校がこれに取り組んでいるのだから、2004年からスタートした中教審の外国語部会の議論は具体策の検討だけだと思われていた。しかし、文部科学省に国民から寄せられたパブリックコメントでは、小学校での英語教育に対して反対論が多く寄せられ、部会でも反対論というわけではないが、慎重論が多く出され、外国語部会の「小学校での英語教育の必修化」議論は前に進まなかった。

確かに、小学校での英語を教科にするとしても、授業時間をどうするのか、指導者の問題をどうするのかなど課題は山積していた。その課題の中には、小学校での英語教育を必修にすると、私立中学入試が過熱している大都市部において、私立中学校が入試の科目に英語を採用し、そのため「ペーパーで測る英語学力」へ引きずられていくという問題もあった。「小学生が英語を学習する」ということに反対する人はほとんどいないが、「小学校で英語を教科にする」ということになると、話が違ってくるわけである。

外国語部会では、中国や韓国と同じように、国が小学校から大学までの各学年ごとにきちんとした教育目標を定めて「国策としてビシッとやるべき」という意見も出された。しかし、市民社会の成熟を背景に、中央集権的な国家体制から分権化へ、そして地方主権国家への道を歩み始めている我が国全体の方向性から考えると、それに逆行するような教育行政の手法には反対も出る。地域分権を基本とした国づくりが始まっていることを考えると、今回の問題も「国が一律に決めて地方が追随する」という図式ではない方法を模索すべきであるということも考慮され、結論を得ないまま、2005年を迎えたのである。

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吉田 博彦(よしだ ひろひこ)

教育支援協会 代表理事

1952年 大阪府枚方市生まれ。中高と神戸で育ち、1976年早稲田大学法学部卒業後、海外子女教育、インターネット教育事業などを行う民間教育会社の経営にあたる。

1997年、「教育支援協会」の設立に参画し、99年、教育分野で最初のNPOとして経済企画庁(当時)の認証を受け、全国組織のNPOの代表理事に就任。また、2003年に特定非営利活動法人小学校英語指導者認定協議会専務理事、2015年に特定非営利活動法人全国検定振興機構理事長に就任し、英語教育の改革や大学入試改革に取り組んでいる。

yoshida

▼『吉田博彦』の過去記事を読む

【2018/11月】英語教育の改革(1)

【2018/10月】現代日本の教育と教育課程の変化(2)

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