【横手 尚子】“世界に通じるマナーとコミュニケーション” ― 教育編(4) ―

 現在講師を務めている学校の中に駿台トラベル&ホテル専門学校と駿台外語&ビジネス専門学校があります。ここでは、海外からの留学生総数が約650人に上ります。

 年齢は20代から30代、出身国は東南アジア圏のタイ、ベトナム・ネパール・ミャンマー、スリランカ、東アジア圏からは中国・韓国・モンゴル、そしてスラブ世界のロシアなどその範囲は広いものとなっています。

 様々な文化圏からやってくる彼らには共通した思いがあり、ホテルや空港、ガイド、旅行会社などのいわゆる観光産業で未来を切り拓きたいと考えています。夢を現実に変えるために。

 日本人だけでなく、そんな彼らにも私は「接客英語」を教えています。

 近頃よく聞かれる言葉かもしれませんが、接客英語とはなんでしょうか?私はそれを「お客様相手に使う丁寧で礼儀正しい英語」のことだと考えています。業界・業種別に使う表現に変化も出てきますが、それらの根本は同じでわかりやすい明瞭な発音で、こちらの気持ちと意図が伝わる英語で、相手の立場に立ったものであるべきだということです。すなわち、私の教える接客英語は、接客マナーなども併せて生徒さん達に学んでもらうことなります。

 こうしてお伝えすると抽象的で実際のイメージは湧きづらいかもしれません。ですので今回は実際に教室でどのような光景がみられるかをお伝えしたいと思います。海外からの留学生に目を向けると、日本人学生との明確なコントラストが浮かび上がってきます。日本人学生と比較した際の「学びの姿勢」とはどんなものでしょうか。いくつか気付いたことは次のようなものです。

 授業における日本人学生と留学生との最も大きな違いは、「発話の積極性」です。これは結論から言うと、生まれ持ったものというよりは、後天的な影響が大きいと思います。すなわち文化の違いというべきでしょうか。

 これまでの日本の伝統的な教育では総じて、授業中は私語を慎むことがお行儀が良いとされ、挙手をし、指された人が優先的に答えるというスタイルがとられていました。先生が授業のすべてを制御してきたわけですね。生徒は命令に従うことこそが善で、自ら発言することは悪である、と第二の本能のように刷り込まれてしまうわけです。

 また、皆の前で英語を話すことが恥ずかしいという意識が強かったり、間違えて恥をかくことを恐れるがあまり、発言しにくい状況が自然と作られてきてしまいました。発言すること自体が悪とされる環境でこの反応はある意味当然と言えるかもしれません。このため、クラスでも積極的に声を上げる学生は、それこそ限られてしまうわけです。

 これに対して、海外からの留学生たちは総じて授業中、常に声を出しています。無駄話ではなく、授業に関連したことや質問が飛び交っているのです。単語や文法ミスを全く気にせず、積極的に意志を伝えようとします(それはミスをすることに無頓着なわけではなく「上達に必要なミス」にたくさん出会える機会を増やしている、ということです)。

 大半が20名以上のクラスですので、とても賑やかで活気に満ちています。そのような状況ですので、私自身も常に彼らよりも大きな声を張り上げていなければなりません。言いかえれば、彼らにとっては沈黙が続き、先生だけが話しているという状況はある意味異常なのだと思います。意見の衝突がある限り、物事は解決に向かっており、対話がない状況はコミュニケーションの断絶を意味しています。

 実践的な接客英会話力をつけるには、いつ何時、いかなる場面でも、どのようなお客さまに対しても心を込めて堂々と話せるようにしておかなくてはなりません。時にはお客さまから大きなクレームが出たり、予想外のハプニングが起きることがあるでしょう。

 すなわち「最善を尽くしながらも、ハプニングや衝突は起こって当たり前」という心境で事に臨むべきだということです。そのような時こそ冷静沈着に、相手の心に訴える言葉をはっきりと伝えられることができるよう、普段から英語を声に出すというトレーニングを積んでおくことが非常に有効です。

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横手 尚子(よこて しょうこ)

接客英会話・接遇マナー講師

学習院大学卒業、元日本航空国際線CA、武蔵野学院大学客員准教授、駿台トラベル&ホテル専門学校、駿台外語&ビジネス専門学校、敬愛大学社会人コース、学びエイド英語科認定鉄人講師、英語発音検定(EPT®)1級、英語発音指導士®。

独自の接遇哲学と明るい授業スタイルにより国内外の多数の生徒からの熱烈な支持を獲得する。著書『世界に通じるマナーとコミュニケーションーつながる心,英語は翼(岩波ジュニア新書)』、『ネイリストのためのマナーと接客英会話(IBCパブリッシング)』、『(外国人送迎ドライバー向け)おもてなし接客英会話テキストブック(Amazon Kindle総合1位、EnglishCentralのテキストとして正式採用)』。

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▼『横手 尚子』の過去記事を読む

【2018/11月】“世界に通じるマナーとコミュニケーション” ― 教育編(3) ―

【2018/10月】“世界に通じるマナーとコミュニケーション” ― 教育編(2) ―

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