【山口 時雄】第27回 校長先生、ハワイのスーパーで 「ワナバ」って訊かれたらどうしますか

家族旅行でハワイに行ったときのことです。スーパーのレジで会計が終わった後、店員さんが「ワナバ」って訊いてきました。「ワナバ?えっ」と固まってしまいました。「ディス イズ ア ペン」「アイ アム ア ボーイ」で英語を習った私たち20世紀世代は、読んだり書いたりは多少できても、聞いたり話したりするのは苦手です。あなたの学校の先生たち、英語授業は大丈夫ですか。

 固まって立ちすくんでいる私を見て妻が「バッグいるかって」と助け船を出してくれました。

 「イエス」と言って紙袋を受け取りましたが、「なぜワナバ」という疑問が残りました。妻の説明によると、「ワナバ」は「Do you want a bag?」(バッグは必要ですか)の略だということ。教科書英語で固まっている日本人が、生きた英語に接して最も困惑する日常会話のひとつだとインターネットの情報で仕入れたらしい。たしかに、日本のスーパーマーケットやコンビニエンスストアでも、「袋は?」「お箸は?」としか言ってくれないケースは多々あります。「ワナバ」と同じですね。

 さて、前回はAIがもたらす教育現場の変化について話しました。今回はロボットです。ロボットは今や社会にとって欠かせないものです。工場の製造ラインはもちろん、物流における商品搬出~荷詰め~梱包等の力仕事から、会社や商店、ホテルの受付、医療現場では手術のサポートや介護支援、人の体に入って内側から人間の病気を診断・治療する医療用マイクロロボットまで開発されています。社会が変化すれば、教育現場だって変化するのが当たり前です。

 AIが学びの形や質、スピードにまで影響をもたらす可能性があることはおわかり頂けたと思いますが、ロボットも教育現場で活躍の場を広げようとしています。得意な分野は英語とプログラミングです。そもそもロボットはプログラミングで動くわけですから、プログラミング学習に使われるのは当然として、英語で利用されるのはなぜでしょうか。2020年の学習指導要領の改訂により英語は小学校では、5~6年で「外国語」として教科化され、3~4年では「外国語活動」が必修化されます。これまで「慣れ親しむ」程度だった小学校英語が、「コミュニケーションできる」レベルを求められることになります。3~4年で「聞く・話す」を体験し、5~6年では「読む・書く」能力が求められることになりそうです。また、中学校でもこれまで高校で実施されていた「英語で英語を教える」という指導方針が示されています。中学や高校では英語の専任教師がいますが、小学校ではどうでしょうか。「読む・書く」は学生時代に学んだでしょうが、「聞く・話す」まで自信のある教師は少ないことでしょう。ALT(外国語指導助手)を活用すればいいのでしょうが、人材や費用の問題で簡単ではありません。そこで登場するのがロボットです。

 英語学習ロボットとして最も有名なのは「Musio(ミュージオ)」です。「Musio」は、人工知能エンジンや人工知能ソーシャルロボットを開発している米国企業のAKAが開発した英語学習AIロボットで、自ら考えて会話し、その内容を記憶していくコミュニケーションロボットです。米国のネイティブ英語での自然な英会話ができるチャットモード、専用教材でレベル・目的別の英語学習ができるチューターモード、単語や表現、会話フレーズの発音練習ができるエデュモードを搭載し、英語学習を楽しくサポートしてくれます。サイズは幅174mm×奥行き83mm×高さ218mmで、重さ約850gです。

 昨年発売以来、多くの学校や教育機関で実証研究やプロジェクトが進行していて、ICT教育ニュースでも度々取り上げています。例えば、明星中学校・高等学校は昨年4月、「Musio」を、私立中学校としては日本で初めて授業に導入。週5コマある英語の授業時間内で、概ね週2回利用しているということです。生徒が使い慣れた段階では、生徒が自由に使える時間を増やしていき、生徒の発話量を増加させるとともに、「(非人間との)リアルな英会話」を通して「実践で使用できる本物の英会話力」を養っていくとしています。

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山口時雄(やまぐち ときお)

ICT教育ニュース 編集長

日本大学法学部新聞学科在学中から映像業界で活動。フリーの映像作家を経て、1986年(株)フレックス入社。NTT関連の広報活動、通信イベント等多数参画。1990年~93年テレビ朝日「ニュースステーション」ディレクター。1994年~フレックス報道担当取締役。2003年、メディアコンサルタントとして独立。2013年~現職。

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