【出口 汪】教育の未来と「ホモ・デウス」

ユヴァル・ノア・ハラリ著(柴田裕之訳)『ホモ・デウス―テクノロジーとサピエンスの未来』(河出書房新社)が世界的ベストセラーである。『サピエンス全史』の著者が描く、テクノロジーとサピエンスの衝撃的未来を予想した書であるが、今の幼児童が将来社会で活躍する頃には、一握りの人間が「ホモ・デウス」、つまり、神の領域に近づく人間となり、大多数が無用の人間になってしまうと言う。

記憶・計算脳はAIに仕事を奪われ、与えられた情報を疑うことなく、ただコピーするだけの人間は、権力者に操られるだけの奴隷化した人間となる。それに対して、記憶と計算という苦役から解放され、肉体労働はロボットに任せることで、真に自由で創造的な人間になることも可能である。「ホモ」は人間、「デウス」は神、つまり、ホモ・デウスの誕生である。

自分の頭で考え、新しいことを創造する脳に育てるためには、旧態依然とした幼児童教育を根本から変革していかなければならない。私一人の力は微力でも、同じ志を抱く多くの人たちと手を取り合うことで、大きなムーブメントを作り出すことが可能である。そこで、「P&Rみらい学習教室」を解消し、それをさらに進化させた「出口式みらい学習教室」を立ち上げた。その上で現在、改めてライセンスパートナーを募集している。

塾が生き残るためのビジネスモデル

「教育ビジネス」とは、教育を変えることが目的で、ビジネスをその手段とすることである。ビジネスを目的として、その手段として教育があるわけでは決してない。ここをはき違えると、間違った教育を子どもたちに押しつけ、彼等の将来の可能性を閉ざしてしまうことになる。

たとえどんなに崇高な理念を掲げた教育であっても、ビジネスとして成功しなければ継続させることができない。教育を変えるためには、ビジネスとして成功させ、それによって拡大・普及させなければならないのだ。そのためにはより成功の確率の高いビジネスモデルを構築しなければならない。

塾業界が立ち向かわなければならないのは何も教育内容だけではない。それ以上に大きいのは少子化の問題である。0歳人口まで子どもが減少し続けるのであるから、何人の子どもを集めるかから、一人の子どもに何年通ってもらえるかに、意識を大きく変えていかなければ到底生き残ることはできない。そのためのビジネスモデルとして、幼児童教室のフランチャイズ展開を提案したい。

塾の授業は大抵夜である。それに対して、幼児の授業は午前中、小学校低学年では夕方早めの時間である。つまり、空き教室を利用して、新しい教育を開始することができるのだ。今回、「出口式みらい学習教室」では主に2歳から12歳児までの子どもを教えることになる。

受験を売り物にしている限り、中学受験、高校受験が終われば子どもたちは塾を辞めることになり、せいぜい通うのは2~3年に過ぎないし、募集時期も限られたものになる。それに対して、「出口式みらい学習教室」は、2歳から12歳、つまり、募集学年は10学年であり、しかも、受験を目的としないのだから、年中募集期間となる。そして、中学生になったとき、本体の塾に組み込めば、2歳から18歳まで、募集学年は16年間となる。既存の塾が生きのこるための、唯一のビジネスモデルではないだろうか。

1 2

出口 汪(でぐち ひろし)

関西大学大学院博士課程単位修得。代々木ゼミナール、東進ハイスクールの講師を歴任し、「国語の文章を論理的に読解する手法」を授業に取り入れ、一躍カリスマ講師としての人気を博する。その後、1993年には「総合予備校S.P.S」を、2000年には教材開発・出版を目的とした「水王舎」を設立する。2003年に発行した「論理エンジン」は、国語を感覚的に解くのではなく、筋道を追って論理的に解くことの重要性を説き、全国公立私学250校以上が採用するなど、大ヒットを記録する。広島女学院大学客員教授、基礎力財団評議員。著書『はじめての論理国語(水王舎)』『出口先生の頭がよくなる漢字(水王舎)』『知っているようで知らない夏目漱石(講談社)』など著書多数。

morigami
▼『出口 汪』の過去記事を読む

【2018/12月】子どもたちの未来のために 本気で教育業界を変える

   ≫さらに読む