【横手 尚子】“世界に通じるマナーとコミュニケーション” ― 教育編(5) ―
現在私は「マナー・おもてなし英語講師」として大学、専門学校などで教育活動をしていますが、今回は前半は訪日外国人を「おもてなし」する上で必要なことは何か?ということについて、後半は私自身の「私教育における実践例」としての、「学びエイド」について、ご紹介したいと思います。
2020年に向けてのインバウンド対策
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて増えゆく訪日外国観光客、わが国ではインバウンド対策が盛んに行われているものの、2017年2月に観光庁が発表した最新の「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート」によると、このような残念な結果が出ました。
外国人が旅行中に困ったこととして、「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」と答えた外国人が2016年に
続き第1位で、全体の32.9%も占めました。そして、施設スタッフとのコミュニケーションにおいて特に不便を感じているところは第1位が「飲食・小売店」、第2位が鉄道・ターミナル、第3位が宿泊施設、第4位が城郭・神社仏閣、第5位が美術館・博物館でした。
このことからもわかるように、訪日外国人の日本のサービスへの不満として、「英語が通じないこと」が最も多くを占めています。やはり言葉の壁は大きな障害になってしまいます。日本のおもてなしに期待して来日される外国人が多い中、意思疎通が全くできなければ、おもてなしどころか相手に不満を与えてしまうだけです。
さらに、以前日経MJが訪日外国人100人を対象に行った「おもてなし不満ランキング」という調査によると、
•飲食店の食券システムがわからない。
•食堂で自販機を指されたが意味がわからず、店員も日本語しか喋らず、諦めて帰った。
•飲食店で食べ方を教えてくれない。
•牛丼屋で生卵が出てきたが、店員も説明してくれず、使い方がわからないままだった。
•店員は気にする素振りもなく、ロボットのように淡々と自分の仕事をするだけだった。
などの結果が挙げられました。
ここで改めて外国人を「おもてなし」する上で必要なことは何か?ということについて見直してみましょう。
まず第一に大切なことは、「相手を助けてあげようとする気持ち(思いやり)を実際に行動で示すこと」だと私は考えます。
そのためには英語ができるに越したことはありません。しかし、たとえ英語が上手く話せなくなくても、相手に興味関心を持ち、説明しようとする態度や伝えようとする思いを形で表すことがおもてなし(マナー)であり、大切なことではないでょうか。国の違う人同士がお互いに気持ちよく接するには、一方的ではなく、双方で敬意を抱き、尊重する姿勢がなければなりません。これは、自分と相手の存在を認め、興味を持つことから始まります。
二点目は、英語の使い方です。いくら英語で話しかけても、相手に失礼な思いをさせてしまうような表現を使ってしまったら台無しです。シンプルでも相手に気遣いが感じられる表現を身につけていくことをお勧めします。私は講演や授業、そして私用でも行く先々で、接客業に関わる方々や、英語を学び、活かしたいと願う人たちと交流する機会があります。
そして今回ご紹介したような心の通った意思疎通をよりよく行うことに役立てるようなノウハウを共有する機会が欲しい、と漠然と思う日々を過ごしていました。
学校で生徒さんと充実した時間を過ごす傍ら、「世代や立場を越えてできることをやってみたい!」という気持ちが湧き上がってきていたのです。