編集主幹のダーツの旅

本紙編集主幹 千葉 誠一(ちば せいいち)

本紙編集主幹の千葉誠一が地域ごとの私塾事情を探るため、ダーツが刺さった地域へ赴く新連載!各地域で活躍を続ける塾や、珍しい取り組みを行っている塾などに取材を敢行。ローカルな運営法の中に、塾で生かせるヒントがある!?

【株式会社日能研関東】新たな私立中学受験のニーズを発掘せよ!!

 設立から45年、日能研関東は私立中学受験の進学塾として、神奈川県を地盤に、東京・埼玉を含めて41教室を展開している。小嶋勇会長から小嶋隆社長にバトンタッチしたのが2006年、それから12年が経ち、時代の変化と流れを受けて、新たな変革が行われつつある。私立中学受験率を上げるための秘策と今後の私教育の展望について、小嶋隆社長に取材した。

なぜ首都圏で私立中学受験が増えているのか?

千葉 御社HPで企業データを確認したところ、神奈川9、東京22、埼玉10の計41校展開、売上79億8,200万円(2018年4月)ですが、生徒数は何名でしょうか? また、一番のボリュームゾーンはどこでしょうか? さらに、展開地域で最も注目しているところはどちらですか?

小嶋 今年9月時点の生徒数は約12,000人(日能研関東のみ)、昨年の同時期と比べて約1,500人増えています。増加が顕著な地域は人口の集中するエリアに重なり、当然ながら我々が注目している地域でもあります。学年別にみると、とりわけ小学校中学年の増加が際立っています。

 増加要因は大きく二つでしょう。一つは「2020年の大学入試改革が取り沙汰されることで、教育に対する関心の高まり」もう一つは「関心層の多くが中高一貫校の教育に注目していること」。継続的な私学各校の取り組みや実績が適正に評価された結果です。手前味噌ですが、当社も『草の根教育講演会』の活動を通じて、私立中高の優位性の喧伝に一役買っている自負があります。

 少子化の影響は神奈川県においても決して無縁ではありませんが、こと私立中高受験に関して、今の時点で逆風は吹いてはいません。そのくらい、昨今の教育熱は私立中高にとって追い風になっています。

 予てから私は、私学は私学進学の意向を顕在化させている、いわば「私学信奉のご家庭」に対してアプローチするだけでなく、自校の「見せ方」を工夫することで、潜在的なニーズを掘り起こすことができると、訴えてまいりました。

 現に、伝統校と呼ばれる学校を含む多くの学校が、積極的な改革を通じて「見せ方」を変えようとしています。それまで私学が選択肢に無かったご家庭が、これら学校の説明会や文化祭に足を向ければ、「わが子を預けたい」と思うようになるのは自然な流れです。とりわけ、6年後のわが子の成長した姿をイメージさせてくれる学校ならば、人が集まるのは自明の理でしょう。

 一昔前ならば、わが子に就職させたい企業を問えば、多くの保護者が「なかみ」を問わず、いわば一流企業の名を挙げたはずです。グローバル化が進む今、選択肢は実に幅広く、実際的な「なかみ」を問う中で多くの人が「会社名に囚われない就職」をする時代です。また、情報化社会において、特に小学生の子をもつ保護者の世代であれば、積極的に情報を取りにいく習慣を身につけています。いまや情報は手軽に入手でき、「より吟味して選択したい」「選択に後悔したくない」という思考が、見せ方次第でその反応を大きく左右するのです。

私立中学受験者を2万人増やす秘策とは?

千葉 これから私立中学受験のマーケットはどうなっていくと思われますか?

小嶋 ここ数年の中学受験マーケットを思うとき、進学塾は以前にも増して私学と協力・協働する必要性を感じずにおれません。首都圏には5万人を超える中学受験生がいますが、更に2万人増やすにはどうしたらよいか、私は今、そんなことを考えています。

 今でこそ首都圏の中学受験率は20%に迫る勢いですが、保護者の世代で中学受験を経験している方はもっと少ない。全国的にみれば、ほんのひと握りでしょう。とすれば、県下有数の公立高校ご出身の保護者にとって「中学受験など思いもよらない」のは無理からぬ話です。このような方々にとって、私学の情報や中学受験情報を取りにいく動機は薄く、どのようにして情報を届けるかは大きな課題となります。これまでと同じスタンスでは解決できないでしょう。知恵を絞り、情報を能率よく届けることで、新しいマーケットは拓けます。

 例えば、私学を敬遠する保護者がよく口にされる「私学は学費が高いから」。その実、公立に進学するのとでは、どの程度違うのかをご存じないことが多いようです。どうでしょう、以前に比べて、良いものに対して、ことさら子の教育について、多少の出費は厭わないご家庭が増えてはいないでしょうか。当社では『教育とお金』(株式会社 私学妙案研究所)という冊子を配布して、「教育費の対価」を明らかにすることで、微力ながら中学受験の啓蒙に力を注いでいます。

機動力のある私学はすでに改革を進めているが…

千葉 あと2年で2020年を目処とした教育改革、大学入試改革が実施されますが、御社としての対応をお聞かせください。また私学の動きについてもお教えください。

小嶋 総じて首都圏私立の学内改革は迅速と思います。また私は、市の教育委員会の依頼で公立小中の先生方にお話しする機会があります。先生方に伺うと、公立小中の在籍生の学力は実に幅広く、指導にはたいへんな労力を要するそうです。その点、私立は入試選抜があるので、生徒と学校の双方が選択を通じて入学を迎えます。結果として生徒のキャラクターや学力は比較的整っており、より的を絞った指導が可能となるはずです。私立と公立の改革スピードの違いは状況の違いに拠るのではないでしょうか。

 他にも、私立中の入試問題に着目すれば、単純な知識を問う「穴埋め型」の比重を減らし、論理的思考を問う「記述型」を増やす傾向は明らかです。こんなところにも教育改革を先取りした私学の機動力ある改革の一端をうかがうことができ、恐らく私立中高の大学実績は更に優れたものになると思います。また、このような公私間の差を目の当たりにすれば、中学受験を選択する家庭は益々増えるだろうと思います。

1 2