【吉田 博彦】大学入試改革の 現状と課題(1)

 ここまで見てきたように、2020年の学習指導要領の改訂に向けて、英語教育は大きく変わろうとしている。しかし、こうした改革に対して、「大学入試が変わらない限り、高校の英語の授業は絶対に変わらない」というのが高校現場の現実で、そのため、文部科学省は2020年の学習指導要領の改訂と並行して大胆な大学入試改革を進めている。ここではその入試改革の全体像と課題をまとめてみる。
 現在の大学入試センター試験を廃止し、それに替わる入学者選考のあり方を議論している文部科学省の有識者会議は、2016年3月25日に、改革の方向性の最終案をまとめた。
 その要点は、まず第一に、入試一発勝負のような現在の形を改善するため、書類や面接で個性や意欲を評価するAO(アドミッション・オフィス)入試や推薦入試を大きな柱にすることだ。最終的には全大学入学定員の約60%をこの形にするというのだが、まだ課題は山積みである。
 有識者会議はこうしたAO入試や推薦入試のような入学者選考方法を採用する際には、「学力不問と冷やかされる状況が生じている」という批判があることへ配慮すべきだとして、かつての「一芸入試」などに対する批判の教訓を生かす必要性に言及している。そのために、実施要綱で「学力検査を免除」といった記載を禁じ、学校成績や民間の検定試験を活用した一定の学力確認を促すべきだとし、入学者の学力測定を徹底することを求めるとしている。
 もう一つの柱である一般入試でも、現在の大学入試センター試験に替わる新テストとして「大学入学希望者学力評価テスト(現在は大学入学共通テストと名称を変更)」を創設し、このテストには、センター試験のような選択式問題だけではなく、正解がいくつも考えられる問題や記述式問題を採用することとした。そして、その採点に人工知能(AI)を活用して採点期間を短縮するなど、できる限り「短絡的な正解追求型入試問題」からの脱却を図ろうとしている。
 こうした全体の改革議論と並行して、各教科の教育内容の改革が議論されており、例えば英語教育については、従来の文法訳読中心の教育から、英語の4技能「読む、聞く、書く、話す」をすべて網羅した「話せる英語力」の教育の実現が進められている。そして、その教育成果を測定できる入試への切り替えのため、英検やTEAP、TOEFLなどの民間の検定試験を入試に採用するなど、2020年から施行される新しい学習指導要領を意識した改革となっている。

1 2 3

吉田 博彦(よしだ ひろひこ)

教育支援協会 代表理事

1952年 大阪府枚方市生まれ。中高と神戸で育ち、1976年早稲田大学法学部卒業後、海外子女教育、インターネット教育事業などを行う民間教育会社の経営にあたる。

1997年、「教育支援協会」の設立に参画し、99年、教育分野で最初のNPOとして経済企画庁(当時)の認証を受け、全国組織のNPOの代表理事に就任。また、2003年に特定非営利活動法人小学校英語指導者認定協議会専務理事、2015年に特定非営利活動法人全国検定振興機構理事長に就任し、英語教育の改革や大学入試改革に取り組んでいる。

yoshida

▼『吉田博彦』の過去記事を読む

【2019/1月】【吉田 博彦】英語教育の改革(3)

【2018/12月】英語教育の改革(2)

   ≫さらに読む