【森上 展安】付属校ブームとは何か

付属校はどのように人気なのか

この数年、受験界をにぎわしているブームの一つは紛れもなく付属校だ。世間で付属校ブームと聞けば、一世代前なら”エスカレーター校”がそんなに人気なのか、と反問されるだろう。本稿で明らかにするが結論から言えば現象的には妥当な反問だ。

現在の中学受験生の親世代の中学受験で、大学付属校と言えば筆頭に慶應普通部と慶應中等部があり、早実があり、立教池袋があり、青山学院があり、女子校では日本女子大、学習院女子、立教女学院、女子美術大学付属などがあり、さらにあげれば男子校には法政第一、第二や明大明治、日本大学の付属校があった。多くが男子校であり、あるいは女子校だった。慶應普通部や青山学院のような付属校共学校は珍しかった。

しかし今日、付属ブームを牽引しているのは共学校の付属となった早実、明々、法政、法政第二、中大、中大横浜などであり、もちろんまた男子付属として高い難度を保つ慶應普通部、早高院、立教池袋、立教新座でもある。他に何よりその提携校がある。そしてこれらの学校はいずれも高い系列大進学率を維持しており、例年若干の異同はあるが、早慶付属でほぼ100%、いわゆるMARCHでほぼ80%以上の系列大進学率となっている。

一方、学習院大学の付属の学習院女子や学習院中高等科の系列大学進学率は60~50%台。立教系列の香蘭、立教女学院は約50%、成城学園50%などとなっている。

そして付属ブームといわれる実態は、以上のうち系列大学進学率80%以上の早慶MARCHの部分で前年比大幅増の現象がおこっており、同率が50%前後の「半付属」と分類される女子校(香蘭、立教女学院など)はブームの中にあるが、男子校(学習院、芝工大、早稲田)は昨年入試こそブームとなったが、今年は沈静化。一方、共学の「半付属」は2年続いて前年割れとなりブームとはなっていない。単に前年割れが不人気ということではないが、2年続いて受験者数が増加した中学受験界にあって、そこで前年割れであるのは少なくともブームとは呼べないだろう。ただし、個別には人気校もあるのでここはあくまで学校種別全体での傾向として言えるということだ。

女子校付属校はブームとなったか

一方で、女子校で付属校が、大きな変動を示している。2018年入試では前年比84%となり、全学校種別(女子校、男子校、共学校と付属校、進学校、半付属校をクロスした9通りの学校種別)中で最も不人気であったが、2019年入試では111.3%と今度は全学校種中最大の上昇幅となっていた。

実はこの校種に入る学校は既に2校しかなくなっており、これは日本女子大と女子美術大の2校だ。そしてこの復調の主因は、実は女子美であって日本女子大ではない。そもそも2校しか該当校がないということ自体、如実に人気がない学校種であることを物語っているが、変動幅が大きいのもわずかにサンプルが2校しかなく、現象がぶれやすい、といった方がよいと思う。とはいえ、日本女子大111.3%、女子美術大118.9%という伸びは大きい。

朝日新聞が4月6日付で報じているが、実は17の女子大のうち、12女子大が志願者を増大させている。記事に紹介されているのは昭和女子大、大妻女子大、東京女子大などだったが、筆者がきいたところでは跡見女子大も増えていた。

勿論、これは文科省の定員厳格化の副産物だが、因みに昭和女子大昭和中高の系列大進学は5割足らずで、同校の中学受験者増加率は今春134.8%と大幅だった。跡見中高は111.9%とこちらも大幅増だった。果たして女子大志願者増のこの動きが、系列の中高の人気とどう結びつくか必ずしも判然とはしないが、少なくとも昭和女子大は珍しく「半付属」の中高があり(他の跡見、大妻などは系列大にほとんど進学しない。東京女子大は系列中高をもたない)大学の伸びが中高の伸びにつながりやすいとは言えよう。大妻系列4校のうち、大妻嵐山だけは大妻女子大に3割近く進学しており、同じ事情が生じる可能性がある。しかし、女子大付属が極端に少なくなり、多くは半付属。女子校に移行するか、あるいは共立や大妻など(大妻嵐山除く)のように完全進学校への移行が進んだ中で、よもや女子大の人気が増大しようとは多くの受験界の関係者は予測しなかったのではないだろうか。

女子大や女子校の強みはキャリア教育の充実と具体的なカリキュラム化、ディプロマ化を進めていることだろう。きっかけは定員厳格化による外部要因による人気増であるにせよ、これを奇貨としてチャンスを生かせば強みを再評価されることもあるだろう。

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森上 展安(もりがみ のぶやす)

1953年岡山県生まれ。早稲田大学法学部卒業。

東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾「ぶQ」を経営後、88年に(株)森上教育研究所を設立。中学受験、中高一貫の中等教育を対象とする調査・コンサルティング分野を開拓した。

私塾・私学向けに『中学受験と私学中等教育』を月刊で発行している。中学受験生の父母対象に「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」セミナーをほぼ毎週主催。著書に『10歳の選択 中学受験の教育論』、『中学受験入りやすくてお得な学校』(いずれもダイヤモンド社刊)。

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