【出口 汪】読む力が子どもを育てる

これからの幼児童教育

近年読解力、語彙力の低下は甚だしい。先日、ある塾の先生に聞いたところ、最近、マンガですら読めない子どもが増えているということだ。今まではマンガばっかり読んでいないで、本を読みなさいと言ってきたものだが、マンガが読める子どもはどうもまだましな方らしい。たしかに、マンガを読むには最低限の読解力が必要である。絵とセリフ、コマ割りを自分の力で読み取っていかなければならない。それに対して、アニメは自分から読み取らなくても、絵もセリフも音楽もすべて用意してくれるから、ただそれらを鑑賞するだけでいいのだ。その結果、マンガも読めない子どもたちが増殖していった。その先に見通せるのは、自分で考えることができない人間たちの増殖だ。まさに日本という国自体が危ういのではないか。

今、私はすべての子どもたちに真の読解力を養成すべく、幼児童教育を始めた。子どもの頃から、マンガ、アニメ、ゲームなどにどっぷりつかった子どもたちは、高度な言語を操る環境をどこにも持てないでいる。そこで、「出口式みらい学習教室」を立ち上げ、全国に読解力、思考力を養成する拠点を作り上げる。そのためには幼児童教育を抜本から変革しなければならない。

幼児の言語習得と「言葉」の必要性

幼児は一歳頃からカタコトで喋り始め、小学校入学する頃にはかなり日常的な会話ができるようになっていく。これは実に奇跡的なことで、何も親が教え込まなくとも、幼児は膨大な言葉とその使い方を自然と吸収していくのだ。大人が初めて見る英単語を数千記憶しようとしたなら、並大抵のことではない。幼児はそれを大人たちの会話を観察することで、自然とできてしまうのである。こうした言語習得期に、子どもたちにどのような言葉の与え方をするかで、その後の能力の成長はかなり異なってくる。

私たちは言葉で世界を整理する。言葉の一つひとつに意味があるのだが、これらを論理で整理することで、私たちはそれらを理解したり、体系づけたり、記憶したり、人に伝えたりできるのである。最近、幼児童だけでなく、大学受験生でも語彙力の不足が問題になっているが、これらも言語習得期に適切な言葉を与えなかったことが大きな原因なのだ。

では、なぜ適切な言葉を与えなかったのか?

実は、日本の漢字教育の失敗がその原因として考えられる。文科省をはじめとする漢字教育はあくまで書き取りが中心になっているからである。六歳までの幼児期はまだ指を器用に動かすことができないので、漢字を書くことが困難である。そこで、文科省では幼児期は漢字ではなく、平仮名・片仮名を習得させ、漢字は小学校に入学してからという指針を与えている。小学校に入ると配当漢字が決められているのだが、これらは主に画数の少ないものから順次学習していくことになっている。なぜなら、画数の少ない方が子どもは書きやすいからである。その結果、人生で一度しかない言語習得期に、日本語の語彙の中心となる漢字の学習を一切行わないことになる。また子ども達は何にも考えずにただ漢字を紙に何度も書きなぐり、書けるようになったらそれで漢字を習得したと思い込んでしまう。その結果、語彙力と読解力、思考力を習得できずに終わってしまうのである。

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出口 汪(でぐち ひろし)

関西大学大学院博士課程単位修得。代々木ゼミナール、東進ハイスクールの講師を歴任し、「国語の文章を論理的に読解する手法」を授業に取り入れ、一躍カリスマ講師としての人気を博する。その後、1993年には「総合予備校S.P.S」を、2000年には教材開発・出版を目的とした「水王舎」を設立する。2003年に発行した「論理エンジン」は、国語を感覚的に解くのではなく、筋道を追って論理的に解くことの重要性を説き、全国公立私学250校以上が採用するなど、大ヒットを記録する。広島女学院大学客員教授、基礎力財団評議員。著書『はじめての論理国語(水王舎)』『出口先生の頭がよくなる漢字(水王舎)』『知っているようで知らない夏目漱石(講談社)』など著書多数。

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