【出口 汪】読む力が子どもを育てる

子どもの脳と成長に必要な力

幼児がまだ漢字が書けないからといって、言葉の習得期に漢字を学習しないことで、子どもの能力を成長させることができない。脳の成長は言語活動と密接な関係を持っているからである。出口式ではこの言葉の習得期に徹底的に漢字を学習させる。もちろん書き取りではなく、読み取り中心に指導していくことになる。漢字は書けなくても、読めれば十分なのだ。なぜなら、書くということと文章を読むということは直接関係していない。しかし、漢字を読めれば、漢字が入った文章を読むことができる。しかし小学校まで待っていると、子どもの言語習得が大幅に遅れてしまうことになる。これは子どもの能力開発において、致命的な結果になる可能性が高いのである。読めるということは意味がわかるということである。それも少ない画数から始めるのではなく、身近なものから始めていく。前述したように、画数の少ないものから学習させるのは、あくまで書き取り中心だからである。

例えば、家で猫を飼っていれば猫は身近なものである。「猫」と書かれた漢字を見せて、「猫だよ」と繰り返しやっていれば、子どもは漢字を見れば猫と認識する。漢字を見せるだけで、脳裏に猫のイメージを作り出すことができるのである。幼児はまだ言語脳が発達していないので、右脳を中心に漢字を習得する。つまり、漢字はもともと象形文字だったので、絵として漢字を認識するようである。しかし、そうした漢字を言語として習得するにつれ、今度は左脳=言語脳がバランスよく発達していく。小学校に入学するまでに小学校4、5年までの漢字が全部読めるようにすれば、幼児でも小学校4、5年生用の文章を読むことが可能になる。そのことで、語彙力だけでなく、読解力も思考力も自然と養成されていくのである。

幼児期はまだ漢字を読めないとされているから、その時期の絵本はほとんど平仮名になっている。当然、漢字を使った小学校高学年用の本とは、その内容の深さには格段に違いがある。幼児期に漢字を読めるようにすることで、より高度な本を読むことができるようになるから、読解力、思考力もそれに連れて他の子どもよりも圧倒的なものとなるのである。さらに小学校5、6年レベルの漢字も本を読むことで、自然と雪だるま式に増えていくのである。

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出口 汪(でぐち ひろし)

関西大学大学院博士課程単位修得。代々木ゼミナール、東進ハイスクールの講師を歴任し、「国語の文章を論理的に読解する手法」を授業に取り入れ、一躍カリスマ講師としての人気を博する。その後、1993年には「総合予備校S.P.S」を、2000年には教材開発・出版を目的とした「水王舎」を設立する。2003年に発行した「論理エンジン」は、国語を感覚的に解くのではなく、筋道を追って論理的に解くことの重要性を説き、全国公立私学250校以上が採用するなど、大ヒットを記録する。広島女学院大学客員教授、基礎力財団評議員。著書『はじめての論理国語(水王舎)』『出口先生の頭がよくなる漢字(水王舎)』『知っているようで知らない夏目漱石(講談社)』など著書多数。

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