【堀切 一徳】実践的英語力(アウトプット重視の英語力)について

平成30年度「英語教育実施状況調査」の結果について

皆さんはおそらくご存じだと思いますが、4月下旬に文部科学省より発表された、公立学校対象の平成30年度の「英語教育実施状況調査」の結果が文科省のHPに掲載されました。

[http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1415042.htm] を参照

すでに読んだ方もいらっしゃると思いますが、この調査が示唆することを確認しましょう。ここでは調査結果の概要を参照しながら、私の考えを述べていきます。

[http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/
__icsFiles/afieldfile/2019/04/17/1415043_01_1.pdf] を参照

この調査では、「中学校ではCFER A1以上(英検3級以上)の生徒が50%以上」、高校では「CEFR A2以上(英検準2級以上)の生徒が50%以上」の二つが目標として掲げられています。(スライド3参照)この調査が始まってから6年目となりますが、中学生では英検3級以上取得が42.6%、高校生では英検凖2級以上取得が40.2%と年々レベルが向上していると考えられます。但し、中学校では、CEFR A1相当の生徒の半数ほど(18.9%)は英検3級で判定されていないことにも注意したいところです。また高校のCEFR A2相当の生徒のうち19.7%は中学校と同様に英検準2級で判定されてはいませんのでやはり注意すべきです。これらのパーセントは目標級と同等の力を持つと(教員が)判断した見なし合格の数字です。全国規模で中高生の英語力を判定しているのですから、見なし合格の基準など、より詳細なデータ開示をすべきなのではと思います。このままですと非常に緩いレベル判定だと感じます。スライド4では、各都道府県別の目標達成率が載せられています。それぞれの都道府県・指定都市で差が大きいですが、中学校で突出して達成率が高いのは福井県(61.2%)とさいたま市(75.5%)です。また高校では突出して高い自治体はありませんが、秋田県(53.3%)、富山県(54.8%)、福井県(56.0%)が目立ちます。福井県ではどんな取り組みが行われているかは一度調べてみる価値があります。この調査概要の後半にも福井県の取り組みの一部は載せられています。このスライド3と4は多くのメディアで取り上げられていました。メディアは目標の達成率や都道府県格差に関心があるようです。

スライド5には生徒の言語活動の状況が挙げられています。ALTを活用すること、教員が英語を使うことによって、英語による言語活動が行われている率が示されています。中学校では3学年ともほぼ75%は英語で活動が行われていますが、高校では英語教育を主とする学科と国際教育に関する学科では82.9%の活動率となりますが、全体では50.6%に留まっています。さらにスライド6では中学校と高校で「話すこと」と「書くこと」のテストを行っている割合が示されていますが、予想通り、高校では20%~30%台です。これは高等学校ではSpeakingとWritingのテストがあまり行われていない、あるいはそれらの指導を行っていないということを意味します。2020年の入試改革では英語4技能重視と謳ってはいますが、新共通テストの英語は、センター入試のマイナーチェンジと言われています。つまりReadingとListeningがどちらも100点になり、Listeningの比率が上がるということだけで後はあまり変化がないということです。従って、高校の授業ではReadingとListeningに力を入れ、共通試験では問われないSpeakingとWritingにはあまり力を入れないという結果になるのは当然です。大学入試を意識する現場では実際の入試の状況に対応せざるを得ないというのが、教員の本音でしょう。共通テストを4技能対応型に変えていくという決断が迫られていますね。Speaking力をどう判定するのか、Writingをどのように採点するのか、大きな問題だと思います。

スライド15には今後の方向性が示されていますが、これは予想通り、話すことと書くことの指導の充実、教員の指導力(英語力)、ALTとICTの活用、小学校については英語専科教員の配置(英語を指導できる教員の増員)・研修の充実などでした。一つとひとつ実行していけば、この英語教育改革は成功に至ると思います。大学関係者は中学高校で実施されている教育内容を考慮に入れて、入試問題を作成してほしく思います。

1 2

堀切 一徳(ほりきり かずのり)

郁文館夢学園英語科教諭

1983(昭和58)年3月、東京学芸大教育学部中等教員養成課程英語科卒業、1985(昭和60)年3月同大学大学院教育学研究科修士課程(英語教育専攻)修了、1986(昭和61)年4月郁文館学園英語科専任教員奉職。以降、33年間郁文館で英語教育に携わる。現在、郁文館独自の教育=夢教育(学力・人間力・グローバル力)を推進する夢教育推進部部長。

おもな著作に、『TOEFLテスト公式問題で学ぶ英文法』(2000[平成12]年、大津由紀雄氏・直井一博氏との共著)。 

horikiri

▼『堀切 一徳』の過去記事を読む

【2019/5月】英語コミュニケーション時代の単語と英文法学習

【2018/8月】効果的な英語学習法について

 

   ≫さらに読む