【堀切 一徳】英語学習と日本語について

小学校の英語教育の目標の一つ

現在の英語教育改革の中で、小学校英語教育の指導体制には、「国語と我が国の文化についても理解」とあり、英語を学ぶ際に英語と国語を比較し、両言語の相違点、共通点に注目させ、ことばへの気づきを促すということが読み取れます。ただ単に英語を学ぶことだけを目標として掲げているわけではありません。このようなことばへの気づきから、文化への気づきへつながることがあるかもしれません。

実際に小学校では、英語と日本語の音の単位を意識させる指導が行われています。例えばstrawberryという英単語は辞書を引くと分かりますが、straw・ber・ryというように3音節語です。英語では文字が母音中心にまとまって三つの音の単位(音節)を構成しています。また、三つの音節の中で最初の音節strawの部分を強く読むという特徴があります。日本語ではどうでしょう。「子音+母音」で音節を作ります。ストロベリーはす・と・ろ・べ・りーです。5音節語ということになります。日本語ではどこか一つの音節を強く読むということはありません。英語と日本語では音のまとまりに違いがあるということを、実際に発音を通して気づかせるという指導を行っています。例えば英語ではstrawはsとtとraw(の音)がまとまって1音節ですが、日本語ではす・と・ろと3音節になります。私たちの世代は英語の音について意識したのは大学入学後であったように思います。それも英語教師になるという目的を持った学生がこのような状況でしたから、特に英語学習を意識していなかった当時の学生たちは英語の音に関して意識を持つことはなかったでしょう。ですから、小学校から英語の音の体系について意識的に学んでおくことはよいことです。

また単語の表す概念についても実際に使われている英語に接することで語感が鍛えられます。例えば列車や電車が停まるところはa stationです。ここから発展して複数のバスの発着所はa bus station、消防署はa fire station、ガソリンスタンドはa gas stationなどと言います。乗り物・人が集まるところをstationと言います。一方でバスの停留所はa bus stopと言います。路線バスが停まるような小さな乗り場はstopで表されます。ALTの先生にこのようなニュアンスを伝えてもらうのもリスニングの練習になってよいですし、日本語と比較させて、英語と同じ感覚であることを気づかせてもよいと思います。

さらにことばに関するルールについても指導することができます。ことばに関するルールとは文法のことです。例えば英語の複数形は基本的には名詞にsをつけることで表せます。文法を語るには名詞というような品詞概念の導入時期も真剣に考えなければなりませんが、ここではひとまず品詞概念を用いるということで話を進めます。日本語には「たち」という複数概念を表す語があります。例えば「桃太郎さんたちは鬼退治に出かけていきました。」と使います。桃太郎さんたちとは、すなわち、桃太郎とイヌ・サル・キジを指します。少し話が難しくなりますが、日本語の「たち」と同様に英語の複数語尾sをMomotaro(桃太郎)に付けて上記と同じ意味を表すことができるでしょうか。“Momotaros went out to bust the demons.”とすると「何人かいる桃太郎が鬼退治に行きました。」となり、Momotarosにはイヌ・サル・キジは含まれていません。日本語の「たち」は異なる名詞をまとめて複数を表せる接辞(語尾)です。敢えて英語でこの「たち」を表せば、“Momotaro’s group went out to bust the demons.”となります。このような文法面でも二つの言語の違いに気づかせることが大切なのです。他の言語と比較しながら、自分自身の言語直感を内省することもことばの教育では大切です。

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堀切 一徳(ほりきり かずのり)

郁文館夢学園英語科教諭

1983(昭和58)年3月、東京学芸大教育学部中等教員養成課程英語科卒業、1985(昭和60)年3月同大学大学院教育学研究科修士課程(英語教育専攻)修了、1986(昭和61)年4月郁文館学園英語科専任教員奉職。以降、33年間郁文館で英語教育に携わる。現在、郁文館独自の教育=夢教育(学力・人間力・グローバル力)を推進する夢教育推進部部長。

おもな著作に、『TOEFLテスト公式問題で学ぶ英文法』(2000[平成12]年、大津由紀雄氏・直井一博氏との共著)。 

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【2019/6月】実践的英語力(アウトプット重視の英語力)について

【2019/5月】英語コミュニケーション時代の単語と英文法学習

 

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