【山口 時雄】第35回 Society 5.0時代に向け「ICT教育」を推進する文科省の本気度

6月25日、文部科学省から「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」という報告書が発表されました。その中にこんな一文がありました。「もはや学校のICT環境は、その導入が学習に効果的であるかどうかを議論する段階ではなく、鉛筆やノート等の文房具と同様に教育現場において不可欠なものとなっていることを強く認識する必要がある」。まさか、まだICTの導入で「効果は・・・」など言っている学校はないと思いますが、公立の小中学校はこれからどんどん変わりますよ。

 報告書の「はじめに」では、これまでの経緯を以下のようにまとめています。

 今回の「先端技術活用推進方策」についての取り組みは、これから到来するSociety 5.0時代を見据え、文部科学省が昨年11月に公表した、学校教育の中核を担う教師を支え、その質を高めるツールとして先端技術を積極的に取り入れること等をまとめた「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」が始まり。その後、初等中等教育局に「学びの先端技術活用推進室」を新設して、子供の力を最大限引き出す学びを実現するために、ICTを基盤とした先端技術を効果的に活用するための具体的な方策について検討、3月には中間まとめを発表した。

 4月には、中央教育審議会に、Society 5.0時代を見据え、義務教育9年間を見通した児童生徒の発達の段階に応じた学級担任制と教科担任制の在り方や習熟度別指導の在り方などの今後の指導体制の在り方、教育課程の在り方、児童生徒一人一人の能力、適性等に応じた指導の在り方、高等学校教育の在り方、教職員配置や教員免許制度の在り方などの初等中等教育全般の教育制度をはじめとした様々な方策に関する諮問(「新しい時代の初等中等教育の在り方について」)が行われ、検討が始まっている。

 そして今回、中間まとめの内容を更に深掘りし、新時代に求められる教育の在り方や、教育現場でICT環境を基盤とした先端技術や教育ビッグデータを活用する意義と課題について整理するとともに、今後の取組方策をまとめた。中央教育審議会の議論と併せて、報告書で示したICTを基盤とした先端技術と教育ビッグデータを効果的に活用していくための様々な取組を両輪として、新時代の学校、子供の学びを実現するための取組を加速していきたい。

「Society 5.0」とは

 さてここでキーワードとなっているのは、「先端技術活用推進方策」の前提となっている「Society 5.0」です。Society 5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のことです。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、政府の第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。

 政府が提唱したビジョンというと、眉に唾をつけたくなってしまいますが、いま世界で、そして日本でも進行している「第4次産業改革」と結びつけて考えてみると、一気に現実味が増してきます。

 第4次産業革命とは、AI(人工知能)・ロボット・IoT・ビッグデータが牽引する技術革新です。例えばAIでは、チェスや囲碁、将棋といった人類の中でも特に知能が高い人たちが職業としている分野で既に、名人クラスを破っています。自動運転や自動翻訳、スマートフォンやスマートスピーカーでユーザーの要望に的確に答えてくれるのも、客からの電話の問い合わせやクレームに応えるのも、1秒間で株の売買を決断するのもAIの得意技です。そして教育界では、一人ひとりの子どもたちに最適な学習方法を提供する「アダプティブ・ラーニング」もAIの得意分野となっています。

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山口 時雄(やまぐち ときお)

ICT教育ニュース 編集長


日本大学法学部新聞学科在学中から映像業界で活動。

フリーの映像作家を経て、1986年(株)フレックス入社。

NTT関連の広報活動、通信イベント等多数参画。

1990年~93年テレビ朝日「ニュースステーション」ディレクター。

1994年~フレックス報道担当取締役。2003年、メディアコンサルタントとして独立。

2013年~現職。

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