【森上 展安】新たな入試の分類「思考コード」

「思考コード」とは

首都圏模試センターが晶文社刊の『中学受験案内』に「思考コード」なる概念で入試の出題について分類している。

各校が入試で出題した問題を縦軸に3段、単純から複雑へ、横軸に3段、A知識・理解思考、B論理的思考、C創造的思考と分け、クロスさせて各々の象限に出題の配点を示している。

例えば学習院の算数入試はB段の単純象限が30%、同中間が35%、A段の中間が35%、あわせて100%という次第。これをすべての学校欄に掲載してあって、これでわかるのは偏差値が高くとも単純で、知識・理解思考の段に配点が多いところが少なくない一方、適性検査型問題となると少なくともB、C段となり、複雑系の出題への偏りが大きい。

そこには明らかに、適性検査型出題の高度性が示されていて、学習院にみるような私立上位校の良い意味での基礎基本を大事にしている姿勢が指標性としては劣位もしくは低位におかれているかのようにも見える。

これを偏差値でみると学習院は四谷大塚の80%偏差値で64とあって(同書による)、同偏差値が51の東洋大京北の<哲学思考>入試の分類は複雑系、論理創造系に、つまり高度にシフトしている。いわば偏差値の序列と思考コードの序列は逆ベクトルにこの場合はなっている。

しかしながら倍率を見ると学習院は2月2日の1回目は2.1倍(2019年春)、一方の東洋大京北1回目で男子4.7倍、女子3.4倍である。

偏差値の50は平均だからその近辺の受験生のボリュームは大きく、ひいては倍率も高い、というのは半面の事実で、半面のフェイクである。

半面の事実の方は偏差値の説明だから申し上げるまでもないが、半面のフェイクの方は少し解説すると、中位難度校は事実として倍率は低く、上位校ではないと2倍強にはならない。にもかかわらず、今日はここで露呈している事実は、中位程度の方が高倍率で、上位校の方が低倍率である。

また、適性検査型のような、上記の<哲学思考>入試の倍率は12.5倍であったり、9.5倍であったり!(但し合格者数はわずか2名)。少なくともこうした現象は数年前には考えられないことで、今回の首都圏模試の思考コード分類は晶文社刊『中学受験案内』に掲載されているくらいで他には見当たらないが、今回の入試現象をよく説明している点で「見える化」に貢献している。

もう一つの貢献としてこの「思考コード」の積極性をあげれば、いわゆるアドミッションポリシーを入試の出題(配点)で鮮明にできる。これは学校にとっての主体性の回復のひとつで、多くの模試の偏差値は学校はいわば客体側でしかなく、アドミッションポリシーとはいわばどうしようもなく相反もしくは無相関ともいうべきもので、学校からすれば外部からのレッテル貼りとしか受け取れなかったに違いない。

逆に言えば、現状の入試における従来のアドミッションポリシーは偏差値輪切り(もしくは層切り)の受験生の中から、いかにして従来伸びそうな受験生を選抜できるか、にあって出題のメッセージは単純平易な中にも知識理解をしっかりつかんでいる受験生に来て欲しいというものが多くの中位校のメッセージだろう。

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森上 展安(もりがみ のぶやす)

(株)森上教育研究所 所長


1953年岡山県生まれ。早稲田大学法学部卒業。

東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾「ぶQ」を経営後、88年に(株)森上教育研究所を設立。

中学受験、中高一貫の中等教育を対象とする調査・コンサルティング分野を開拓した。

私塾・私学向けに『中学受験と私学中等教育』を月刊で発行している。

中学受験生の父母対象に「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」セミナーをほぼ毎週主催。

著書に『10歳の選択 中学受験の教育論』、『中学受験入りやすくてお得な学校』(いずれもダイヤモンド社刊)。

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