【山口 時雄】第36回 Society 5.0時代に向け「ICT教育」を推進する文科省の本気度<後編>

前回は、文部科学省から6月に公表された「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」の基本的な考え方、Society 5.0に向かう社会における、学びのあり方、教師の立場などでしたが、今回はいよいよ報告書の本題「基盤となるICT環境の整備」について紹介します。油断していたら、あっという間にICT後進校になりますよ。

ICT環境の整備は急務

 「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」における、「基盤となるICT環境の整備」の項のはじめには、「先端技術や教育データの活用には、大前提としてICTの基盤が整っている必要があり、現在の学校現場においては、様々な教材等における動画の利用や、教科書におけるURLやQRコードを通じたウェブサイトへの誘導が行われており、ICTの活用は必須のものとなりつつある」とした上で、OECDの国際教員指導環境調査(TALIS)2018で、日本の中学校教員のICT活用の割合が17.9%と参加国(48カ国・地域)中で2番目に少ない(参加国平均は51.3%)ことが明らかになるなど、日本のICT活用状況は世界から大きく後塵を拝しており、危機的な状況だと指摘しています。

 ここで、前回紹介した一文が登場します。「もはや学校のICT環境は、その導入が学習に効果的であるかどうかを議論する段階ではなく、鉛筆やノート等の文房具と同様に教育現場において不可欠なものとなっていることを強く認識する必要がある」です。

 とにかくいま、教育に関わるすべての人が認識しなければならないのは、「日本のICT活用教育は危機的状況にある」ということであり、「つべこべ言わずに実行する」レベルだということです。何が何でも、ICT環境は整備しなければならないのです。

予算の問題に対する指針や方策

 文科省では、地方自治体のICT環境整備が進まない理由として、必要な機器の整備コストが高いこと、そもそもどのような整備を行うべきか判断がつかないことなどを理由として挙げています。機器が高くて購入する予算もないし、何をどうしていいかも分からないということのようです。

 そこで文科省では、予算の障壁でなかなかな進まない1人1台を目指す学習用のコンピュータなどについていくつかの指針や方策を示しました。

 はじめに、「学習者用コンピュータは先端技術を取り入れた高価・高性能な機種である必要はなく、むしろ安価で一般に普及しているものを時代に合わせて更新していくことが望ましく、また、総コストも下げられる」とした上で、「適切な通信ネットワークとパブリッククラウドに基づくクラウドコンピューティングが極めて有力な選択肢となる。世界の教育端末市場では、クラウドベースで安価な端末を提供するGoogle Chromebookが2018年には世界の35%、アメリカの総購入数の60%を占めている」と、具体的な端末名まで示して、日本の教育市場における廉価端末の販売・導入を促しています。

 また、「更なるコストダウンに向けて、地方自治体が大量に一括調達を行うことが効果的であることから、『全国ICT教育首長協議会』等と連携し、複数地方自治体による一括調達等の方策も積極的に検討していくべきである」としています。

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山口 時雄(やまぐち ときお)

ICT教育ニュース 編集長


日本大学法学部新聞学科在学中から映像業界で活動。

フリーの映像作家を経て、1986年(株)フレックス入社。

NTT関連の広報活動、通信イベント等多数参画。

1990年~93年テレビ朝日「ニュースステーション」ディレクター。

1994年~フレックス報道担当取締役。2003年、メディアコンサルタントとして独立。

2013年~現職。

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