【川山 竜二】ラーニング・ソサエティの台頭 ―人生100年時代・知識社会・リカレント教育

社会動向と教育

Society 5.0、人生100年時代、働き方改革など社会の動向を語る言葉には、枚挙にいとまがない。社会の動向を語る言葉がたくさんあるといっても、共通点があるはずだ。なぜ、教育に社会の話を持ち出すのかといえば、答えは簡単だ。教育は教えること自体が目的ではない。社会のニーズに合わせた人材を養成することである。だから、教育を考えることと社会を考えることは切っても切れない関係にある。回り道になっても、今がどんな社会なのかを見極めて教育を考えることが大切なのである。

話をもとに戻そう。さまざまな言葉で社会が語られているが、本質的に今の社会は「知識社会 Knowledge Society」である。情報社会ではなくて、知識社会だ。知識社会を簡単に定義すれば、社会のさまざまな領域で知識が中心的な要素となる。もう少し簡単に言えば、生産要素の中心が知識で、知識の利活用が重要になる社会のことである。知識社会で説明した方が冒頭の言葉がスッキリ見えてくる。

Society 5.0は、別の言い方をすれば「超スマート社会」と言うらしい。誤解を恐れずに言えば、超スマート社会は「情報技術やAIの知識」をどのように社会へ活用させるのかが重要となる社会ということができる。

では、人生100年時代を知識社会から眺めてみるとどう見えるのか。こちらはいくつかの要素に分解できる。人生100年時代で言いたいことは、高齢化して人生(寿命)が長くなっているということである。人生100年時代になると、これまでよりも相対的に「知識などを学ぶ」時間が少なくなる。例えば、人生80年時代で大学卒業年齢が22歳であれば、およそ人生の1/4を学びの時間に占められていた。ところが人生100年時代で大学卒業年齢は変わらず22歳であれば、人生の1/5に減少することになる。割合で考えても教育を受けている期間は少なくなる。よくよく考えてみればわかることだが知識社会においては、知識がさまざまな社会領域での基盤になるのだから、知識生産も盛んに行われるはずだ。そうなれば、知識のライフサイクル(知識の寿命)は短くなる。人生100年時代に、22歳までに学んだ知識が通用するだろうか。通用しないのであれば、知識のアップデートが必要である。昨今、話題となっている社会人の学び直しというものが姿を現してくる。これをリカレント教育と言っている。

リカレント教育は最近注目を集めているが言葉自体は古く1970年代から提唱された考え方である。リカレント教育というのは、単純な「社会人の学び直し」ではない。労働と結びついた教育というと少し泥臭い感じがするが、自分自身のキャリア形成に資するような学び直しと考えるとよいだろう。そう考えると、働き方改革もまた別の視点が見えてくるのではないだろうか。

働き方改革で問題になっているのは、長時間労働の是正などが謳われている。ここで一つの問題は、生産性の向上である。そんな単純な問題ではないが、生産性が向上すれば長時間労働解消の一助となるはずである。そのためには、どのように生産性を向上させるのか知恵を巡らせたり、働いている人間のスキルをアップデートすることが必要ではないだろうか。もう一つは「働き方観」である。有り体に言えば、これまでの終身雇用とは違い、働き方が多様化すると、これまで自分が経験していない職業に就く可能性がある。その場合、自らがその職業に対する知識やスキルを習得することが必要になる。働き方改革もリカレント教育の視点から捉え直すことが可能だ。その背景には、知識の利活用がある。

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川山 竜二(かわやま  りゅうじ)

学校法人先端教育機構
社会情報大学院大学研究科長・教授

文部科学省
持続的な産学共同人材育成システム構築事業委員
実務家教員COE 事業責任者


専門学校から予備校まで様々な現場にて教鞭を執る実績を持つ。
現在は、「社会動向と知の関係性」から専門職大学、実務家教員養成の制度設計に関する研究と助言も多数行なっている。そのなかで、リカレント教育やラーニング・ソサエティ、知識3.0を提唱。現在の関心のキーワードは、実践の理論・高度専門職業人。

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