【森上 展安】入試は適応で選べ

中学入試問題をこれまで大量観察して分析した内容のものはなかった。今回、首都圏模試の「思考コード」分析を借りて問題の難易を偏差値と対照して並べ替えることができた。するとそこに浮かび上がったのは受験生に適応しようという入試問題の見事な対応ぶりだった。

入試問題出題の現在

私共森上教育研究所では、首都圏模試が私立中学に対して出題の配点について各教科でA=知識・理解思考、B=論理的思考に分けて配点を訊き、加えて各々のレベルについて三段階のいずれに該当するかを訊いた「思考コード」分類を借りて、ほとんどの私立中学入試における出題(今回は国算に絞った)に対し、そのAとBにおける首都圏模試の偏差値との対応をグラフ化した。するとそこに現れたグラフは経験的にこれまでの教科指導で言われていたことが改めて裏付けられたという意味では意外性はないものの(それだけに納得性は高いが)、実際の「選抜」の役に立つよう機能的に出題が配分(配点)されていることもまた明瞭になった。

男・女・共学校の配点

極めて特異なグラフになったのは男子校の配点だ。細かなことはさておき大きな特徴だけ言えば、男子校の出題(配点)は二極に分化しているということだ。すなわち難関と入り易い学校とに対応して、出題もAの配点は負の相関を、Bの配点は正の相関を示すのだが、そうはいっても出題のバラツキが両端に偏在していることが鮮明になった。

これに対して極めて対照的なグラフになったのが女子校の配点で、各々の相関が更に鮮明であり、それは見事なものだ。つまり、基礎的な知識、理解を問うAにおいては負の相関の典型的なグラフであり、論理的志向を問うBにおいては正の相関の典型的なグラフになった。

これら男子校、女子校のあり様に対して、共学校はどちらかというと女子校に近く偏差値に対してバラツキが相関していたのだ。

国算でも違う様相

さらに言えば、算数と国語でも面白い様相が現れた。

算数は、既述した相関グラフの傾きが大きく、要は相関の働きが鮮明に出た。一方、国語については、一次関数のグラフはどちらかと言うと「寝て」おり、傾きは緩やかだった。

これは男・女・共学の別はなく算数がより選抜に向けて序列化されているのに対して、国語についてはどちらかというと相関がかなり緩く正・負の相関は鮮明ではなかった。

これはつまり実情もそのようなもので、必ずしも言語能力においては算数のような目立った差異はなく、またそうした出題をしても受験生の選抜に差し支えが出ていないと理解できる。

共学校の非特徴的特徴

こうして見るといかに女子校が丁寧に受験生に寄り添う選抜をしているかが分かる。同時に、女子校のバラツキに傾いているとはいえ共学校の出題が相関の弱いバラツキになっていることから言えるのは、選抜問題とりわけ算数が受験生の学力に向き合っていない恐れがあるということだ。

男子校でバラツキが偏在しているのは、男子校自体の数が少なく難関上位に集中しているためで、男子校の中位校が存在していないことによるものだろう。

これを埋めているのがすなわち共学校であり、男子中位層にとって共学校の存在はまさにニーズを満たすものである。

ところが、出題がそのようになっているのを見ると、学力に見合った選抜ができていない恐れがあることもまた確かなことだろう。

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森上 展安(もりがみ のぶやす)

(株)森上教育研究所 所長


1953年岡山県生まれ。早稲田大学法学部卒業。

東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾「ぶQ」を経営後、88年に(株)森上教育研究所を設立。

中学受験、中高一貫の中等教育を対象とする調査・コンサルティング分野を開拓した。

私塾・私学向けに『中学受験と私学中等教育』を月刊で発行している。

中学受験生の父母対象に「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」セミナーをほぼ毎週主催。

著書に『10歳の選択 中学受験の教育論』、『中学受験入りやすくてお得な学校』(いずれもダイヤモンド社刊)。

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