【山口 時雄】第37回 新学習指導要領が示す高校の英語教育「4技能・5領域」の意味とICT活用

「よう熊さん。2020年度から大学入試が変わるんだってな」「そうよ辰っぁん。記述式が導入されたり、英語4技能が問われたりするらしいぜ」「そりゃあてぇへんだ。高校で4技能とやらを勉強しなきゃぁな」なんて、長屋のおとぼけコンビみたいなことを考えていたら、21世紀に役立つ英語教育はできませんよ。

学校で英語を学ぶ目的とは

 学校で英語を学ぶ目的は何でしょうか。20世紀の教育では、英語は入学試験のために学ぶものでした。中学で学ぶのは高校入試のため、高校で学ぶのは大学入試のため、大学で学ぶのは卒業して就職するためです。年間数10時間を、中高大で10年間学んでも、英語で道案内ができたり、海外旅行で不自由しない人がどれほどいるでしょうか。それが20世紀の日本の英語教育でした。当時の教育現場には「英語は学ぶものではなく、使うもの」という認識がありませんでした。21世紀になって小学校から英語を学ぶようになっても、この考えが変わらなければ、「受験のための英語教育」を「使える英語教育」に改革することはできません。

 2020年度から大学入試が変わります。新入試の英語の試験では、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能が評価されるようになります。「英語4技能」と呼ばれて教育界を騒がせています。大学入試で「英語4技能」を問うのは、高校で学んだ能力を問うためです。大学入試が「英語4技能」になるから高校で学ぶのではありません。新しい学習指導要領は、Society 5.0を支える第4次産業革命、グローバル化が進展する社会で予測困難な時代を生き抜くために求められる「課題解決能力」や「情報活用能力」を育むことを目指すもの。英語は重要なツールのひとつなのです。

 Society 5.0を支える第4次産業革命の中心となるのは、「AI(人工知能)」「IoT(モノのインターネット)」「ロボット」「ビッグデータ」だと言われています。社会のあらゆる分野で、大きな変革が起こります。変革を支えているのはコンピュータであり、それを動かすプログラムです。もちろん、プログラムはすべて英語で記述されています。

 Society 5.0では、社会全体のグローバル化も劇的に進展します。ビジネスモデルのグローバル化はもちろん、日本の企業でも英語を公用語化したり、トップや役員を外国人が務める企業が増えています。特にIT関連の分野では外国人技術者が社員採用されたり派遣雇用されたりして、社内の多国籍化が進んでいます。外国人に求められる日本語能力は日常会話程度でも、日本人社員に求められる英語能力はビジネスレベルだったりします。

 21世紀の社会における「英語能力」は、20世紀のようにIT技術者や商社勤務者に求められる専門的な能力ではなく、あらゆる分野・職種に求められる基礎能力なのです。

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山口 時雄(やまぐち ときお)

ICT教育ニュース 編集長


日本大学法学部新聞学科在学中から映像業界で活動。

フリーの映像作家を経て、1986年(株)フレックス入社。

NTT関連の広報活動、通信イベント等多数参画。

1990年~93年テレビ朝日「ニュースステーション」ディレクター。

1994年~フレックス報道担当取締役。2003年、メディアコンサルタントとして独立。

2013年~現職。

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