「Edvation×Summit」の主催者が語る、STEAM教育のその先を見据えた“イノベーション”とは

11月4日・5日に千代田区立麹町中学校・紀尾井カンファレンスで、国際的な教育イベントEdvation×Summit 2019が開催された。2016年に始まり、今年で3回目となる同イベントは、国内外の先進事例を紹介することで新しい教育の選択肢を提供し、既成概念にとらわれない教育イノベーターを生み出すことを目的としている。今回は同イベント主催者である佐藤昌宏氏にお話を伺った。

デジタルハリウッド大学大学院教授 佐藤昌宏氏

□開催のきっかけは全米最大の教育イベント

Edvation×Summitは、日本国内では他に類を見ない、イノベーションにフォーカスした教育イベントだ。その開催のきっかけには、まず全米最大の教育イベントであるSXSW(サウスバイサウスウェスト)eduとの出会いがあり、そこにインスパイアされたことから始まった。Edvation×Summitはいわば「日本版のSXSWedu」なのである。

なぜ佐藤氏はSXSWeduに感銘を受けたのか。それは時を10年ほどさかのぼる。その頃同氏はデジタルハリウッド大学大学院の設置メンバーの一人として名を連ねたり、e-ラーニングの開発を行ったり、という事業に身を投じていた。そんな中、海外からEdTechという言葉が聞こえ始めてきたのである。これからはe-ラーニングとは違う、テクノロジーを活用した教育のイノベーションが必要になるだろうと考えた佐藤氏。しかし当時は誰も相手にしてくれなかった。その約2年後、アメリカで教育イノベーションのイベントがあると聞いて参加したのがSXSWeduだった。

当時、日本ではなかなか受け入れられなかった主張がSXSWeduを通じてアメリカでは受け入れられた同氏。何度もSXSWeduに参加しているうちに日本でも教育イノベーションのイベントをやりたいと考えるようになった。

□他の教育イベントとは一線を画す“イノベーションの匂い”

日本でもさまざまな教育イベントが催されているが、それらのイベントとEdvation×Summitは何が違うのか。ポイントは入場料にある。

日本で行われている教育イベントの多くは入場料が無料、出展者から出資で運営されている。出展者がお客様である以上、イベントには出展者が満足するコンテンツが求められる。それは、来場者数であり、名刺交換の人数である。

一方、Edvation×Summitは13,000円という決して安くない入場料を設定することで、来場者をお客様へとランクアップさせることを可能にした。来場者を満足させるコンテンツ、それは最先端の情報であり、新しい知識・課題のインプット、人とのつながりなのである。

同氏は上記のことに着目し、教育イノベーターとつながることができる独自のコミュニティ、イノベーターが集まることで醸されるイノベーションの匂い、空気感、その他にもSXSWeduからインスパイアされた様々な要素を取り入れることに成功したのだ。

□2019年は日本の教育変革元年である

10年前、日本ではなかなか受け入れられなかった同氏の活動。しかしここ2、3年で随分とその風向きは変わってきた。経産省がEdTechという単語を使い始め、文科省、総務省、そして政府もテクノロジーを活用した教育のイノベーションに参入。それに伴い、同氏も政府の教育政策に専門家として提言を行うまでとなり、活動の幅もより一層多岐にわたるようになってきた。

しかし、日本はまだまだ教育に関して先進諸国から遅れを取っている状態だと言えるだろう。アメリカなどの教育先進国では、すでに教育現場のICT化はインフラ的に整備され、その上でどのような教育を行っていくか、というフェーズに入っている。オバマ前大統領が提唱したSTEM教育やその発展形であるSTEAM教育は、そういったフェーズにおいて生まれてきた教育概念に他ならない。

日本でもSTEM/STEAM教育という単語自体は浸透してきた感があるが、日本はまだインフラを整備が完了していない段階にある。しかし、佐藤氏はこれからの巻き返しは十分可能だと断言する。キーになるのは「個別最適化」だ。同氏は語る。

「個別最適化をナショナルプログラムでやっている国は世界に他にないので、これができれば日本の教育は世界最先端に躍り出ることになるでしょう」

□個別最適化と新時代の価値「ユニークさ」

日本は今、教育テクノロジーのインフラ整備とそこに付加価値を創造していくSTEM/STEAM教育を同時に進めている。グローバル化が進行し優秀な人材像は世界共通となった今、世界に通用する人材であると同時に他の誰にもマネができない付加価値が求められる。技術は真似できても「ユニークさ」は真似ができない。

「『ユニークさ』という付加価値を生み出すこと。STEMではなくSTEAMに加えられたA、リベラルアーツの分野。これらは本来日本人が最も得意としている領域なんです」

と同氏は語る。

個別最適化をナショナルプログラムとして進め、個々の「ユニークさ」を尊重できるような教育が実現すれば、既成概念にとらわれないイノベーターを日本からも輩出できるようになるはずだ。つまり、イノベーターを育てられるかは教育次第なのである。そして、STEAM教育に他の国の人たちが今まで与えてこなかった価値を加えることができるかもまた、教育次第なのである。新しい教育の選択肢を提供し、既成概念にとらわれない教育イノベーターを生み出すことを目的に始められたEdvation×Summit。その挑戦はまだ、始まったばかりだ。

講演会場の様子

展示会の様子

Workshopの様子