【出口 汪】英語力の前に「国語力」

大学入学試験に「英会話」は必要ない

大学入試における英語の民間試験導入が先送りされた。指摘されていた様々な問題点が解決される可能性はきわめて少なく、おそらく中止になるに違いない。このことは日本の教育を考えるにあたって、大きな問題点を浮き彫りにさせてくれた。

グローバル社会の到来を目前に控え、多くの日本人が英語を話せないのは問題だという議論が入試改革を牽引した。日本人は6年間も英語教育を受けているにもかかわらず、なぜ英語が話せないのか。大学入試において、文系、理系を問わずこれほど英語を重視しているにもかかわらず、である。その原因が読解と文法を中心とした英語教育と、大学入試問題にあるというわけである。

問題解決のためには、問題点を整理しておく必要がある。

まず民間の検定試験導入を云々する前に、大学入学試験に4技能を入れること自体が疑問である。大学入学試験は「読む」「書く」が中心であって、せめて「聞く」までに留まるべきである。なぜなら、大学入学試験は大学で学問をする能力を判定するものであって、それには「英会話」は必要ないからだ。「話す」を試験で判定しようとするから、民間の検定を活用せざるを得ないのである。アメリカでは幼稚園児でも英語を話しているが、その幼稚園児が大学で学問をする能力があるわけではないのは言うまでもない。もちろん英会話が不必要だと言いたいのではない。大学入学試験に4技能を組み入れる必要がないと言いたいのだ。

そして、何よりも大切で、多くの議論で欠けている本質的な問題は国語にあるのではないだろうか。つまり、国語力がないから、英会話を含めて、英語力が身につかないのではないか。英語の民間試験導入の前に、まず旧態依然の国語教育をこそ見直す必要があるのである。

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出口 汪(でぐち ひろし)

株式会社水王舎 代表取締役


関西大学大学院博士課程単位修得。代々木ゼミナール、東進ハイスクールの講師を歴任し、「国語の文章を論理的に読解する手法」を授業に取り入れ、一躍カリスマ講師としての人気を博する。その後、1993年には「総合予備校S.P.S」を、2000年には教材開発・出版を目的とした「水王舎」を設立する。

2003年に発行した「論理エンジン」は、国語を感覚的に解くのではなく、筋道を追って論理的に解くことの重要性を説き、全国公立私学250校以上が採用するなど、大ヒットを記録する。

広島女学院大学客員教授、基礎力財団評議員。著書『はじめての論理国語(水王舎)』『出口先生の頭がよくなる漢字(水王舎)』『知っているようで知らない夏目漱石(講談社)』など著書多数。

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