【川山 竜二】文系・理系・職業系?―専門職教育のゆくえ

文系/理系の問題

学習指導要領の改訂や大学入試改革で騒がしいが、そのときにたびたび付随的に言及されるのが、「文系/理系」の区分の問題である。「文系/理系の問題」の歴史は古く、C・Pスノーが『二つの文化と科学革命』を著して以来、2つの区分の断絶を嘆きながら特に問題も解決せずに、現在まで問題になっては立ち消えをすることが定番となっている。

これは、日本だけの問題にとどまらない。スタンフォード大学では「文系=ファジーFUZZY」、「理系=テッキーTECHIE」というかたちで区別され議論されることが多い。最近では「文系/理系」の問題は汎用性が高いようで、「STEM教育」=科学・技術・工学・数学の領域の問題。あるいは、STEM教育ではなく「リベラル・アーツ的教育」が必要であるという主張をするときにも「文系/理系」の問題は顔を現す。

ところでなぜ、大学入試改革のときに、「文系/理系」問題が言及されるかといえば、それぞれの学部系統と入試科目群が紐付いているからである。大学の学部系統についていえば、「文系・理系」という区分よりかは、「自然科学・人文(科)学・社会科学」の3つの文化で認識されることになる。世界システム論者で有名なI・ウォーラーステインは、この区分が成立したのは第二次世界大戦後であるという。「自然科学=理系/人文(科)学=文系」の間にたちわって第3の領域として、「社会科学」が誕生した。自由主義陣営の勝利によって、明確な社会科学(政治学・経済学・社会学)がたち現れてきたと主張をしている。そのため「社会科学」論(社会科学とは何かを考える)を論じるときの定番が、文系/理系どっちつかずだという議論である。

この「文系/理系」であろうと「自然科学・人文(科)学・社会科学」であろうと、「STEM」と「リベラル・アーツ」であろうと、問題になるのは細分化もしくはタコツボ化の問題である。「文系もある程度AIなどの先端テクノロジーを知っていないと生き残れない」、「理系の人間は、人間的な理解が足りないのでリベラル・アーツ教育が必要だ」などというのは、区別があるからこそ発想される考え方なのである。当然といえば当然のことなのだが、領域が分けられて学習をすることによって、学習内容にかたよりが生じてしまうことは避けられない。時代が進めば進むほど、蓄積される知識は増加していく。そうであるならば限られた時間のなかで選択して学習しなければならない。おそらく、広くさまざまなジャンルの学習をしたところで、「おまえの専門はないのか?」と尋ねられるのが関の山だろう。私たちが生きる高度に複雑化した社会には、専門特化した高い専門性が求められているに違いない。

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川山 竜二(かわやま  りゅうじ)

学校法人先端教育機構
社会情報大学院大学研究科長・教授

文部科学省
持続的な産学共同人材育成システム構築事業委員
実務家教員COE 事業責任者


専門学校から予備校、大学院まで様々な現場にて教鞭を執る実績を持つ。
現在は、「社会動向と知の関係性」から専門職大学、実務家教員養成の制度設計に関する研究と助言も多数行なっている。そのなかで、リカレント教育やラーニング・ソサエティ、知識3.0を提唱。現在の関心のキーワードは、実践の理論・高度専門職業人。

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