【川山 竜二】ICT教育のこれから Society 5.0に対応する教育へ向けて

Society 5.0で考えるべきこと

Society 5.0の文脈のなかで、ICT教育について語られることが多い。Society 5.0について、簡単に言及しておきたい。Society 5.0は、情報社会(Society 4.0)につづく理想的な社会像を指している。情報技術を利活用することで、フィジカル空間(現実空間)とサイバー空間(仮想空間)を融合させ、シームレスな社会を作り出す。その結果、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会となる。詳しくは内閣府のHPを参照してほしいが、言わんとすることは「いまある情報技術を利活用」してさらによりよい社会を目指すということだ。

ここでSociety 5.0における教育で考えるべきことを整理しておきたい。単純に2つの考えるべき問題系が見えてくるだろう。

ひとつめは、「テクノロジーの利活用」の問題系である。つまり、これは通常考えられている問題系で、教育にどのようにテクノロジーを導入していけばよいかという問題である。実はそれだけの問題ではなく、AI教育の導入のように、学び手に対して「テクノロジーの利活用」をどのように学習してもらうかも問題となる。

後者の問題は、もうひとつの問題系にも密接に関係する。それは、「社会変化(社会構造の変動)」という問題系である。つまり、Society 5.0の実現による社会構造の変化についても考えておく必要があるということである。よく、AIによって仕事がなくなる、などと言われているが、問題は社会の仕組みがどのように変わるのか。変わったことによってどのような能力が求められるようになるのかを考える必要がある、ということだ。

Society 5.0という文脈のなかで考えるとしても、結果的にはどのような方法で教育を行うのかという教育工学的な問題と、どのような教育をしていけばよいのかという教育課程的な問題を考えた上で、最適な組み合わせを考えることが必要となる。

 

これから教育の担い手に求められる能力

以上の点から、Society 5.0時代における教育の担い手に求められる能力について考えてみよう。端的に必要な能力とはなんだろうか。それは、教育を俯瞰して眺めることができる能力である。社会のなかで、自分がすべき教育の役割が何かを位置付けることができる、ということだ。言い換えれば、さきの教育工学的な問題と教育課程的な問題を組み合わせる力である。

たとえば、個別のデマンド(学習ニーズ)に合わせた教育を実現させるためにはどうしたらよいか。どのような方法で個別のデマンドを満たせるのか、そもそも個別のデマンドに対応しうる教育コンテンツをいかに作り出せるのかを考えることが求められる。

こうした能力は、1人の人間がすべて持っている必要もない。まさに、Society 5.0の社会ではサイバー空間と繋がっているのだから、持っていない知見は繋ぎ合わせればよいのだ。そうした意味で、何と何を結びつけることで最良の教育ができるのかという俯瞰の能力がやはり必要になるであろう。

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川山 竜二(かわやま りゅうじ)

学校法人先端教育機構
社会情報大学院大学研究科長・教授

文部科学省
持続的な産学共同人材育成システム構築事業委員
実務家教員COE 事業責任者


専門学校から予備校、大学院まで様々な現場にて教鞭を執る実績を持つ。
現在は、「社会動向と知の関係性」から専門職大学、実務家教員養成の制度設計に関する研究と助言も多数行なっている。そのなかで、リカレント教育やラーニング・ソサエティ、知識3.0を提唱。現在の関心のキーワードは、実践の理論・高度専門職業人。

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