【山口時雄】第40回 学びとICT 2020年に始まること始まらないこと

いよいよ2020年が始まりました。教育界的には、2020年度は重要な年になるはずです。なるはずでした、ともいえるかも知れません。とにかく2020年度から小学校で正式に新学習指導要領が実施され、大学入試改革も始まり、教育現場では「新しい学び」の実現を目指すことになります。準備は大丈夫でしょうか。

始まらなかった「英語4技能の民間試験活用」

始まらなかったことといえば、新しい大学入学共通テストでの「英語4技能の民間試験活用」です。昨年11月1日、萩生田文科相が会見し「自信を持ってすすめるシステムになっていない」と2020年度からの導入を延期、5年後採用を目指す、と発表しました。7月にTOEICが参加申込を取りやめたあたりから怪しい雰囲気はあったのですが、有名大学が次々と採用しない方針を決めたり、全国高等学校長協会から「試験の周知に計画性がなく、詳細が明確になっていない」などとして実質的な延期要請があり世間的な関心を集め始めました。決定的だったのは10月、萩生田大臣のテレビ番組での「身の丈」発言でした。住む地域や家庭の経済状況で不公平は生じないかという懸念に対して「身の丈に合わせてがんばって」と格差を肯定するような発言をしたというものです。これに対して国会で野党が激しく反発、導入を延期する野党提出法案の審議を与党に求める方針を決めました。こうした圧力を受けて、萩生田大臣の延期会見になるのですが、民間試験の活用では以前から「試験会場」「試験監督」「セキュリティ」「試験費用」「異なる試験の評価方法」など多くの課題が示されていました。突然課題が噴出したわけではありません。そもそもこの制度は下村元文科相の肝いりで始まったもので、Society 5.0を目指す日本にとっては欠かすことのできない英語能力の抜本的改善を目指す素晴らしいアイデアです。しかし、実施を急ぐあまり抜本的な課題に目を背けて見切り発車をしてしまいました。何より新時代のSociety 5.0を視野に入れるのであれば、ICTを活用したCBTの導入は最低限必要だったはずです。

CBTとはComputer Based Testingのことで、コンピュータを利用した試験です。今回の民間試験の中に「○○CBT」「××CBT」とあるのがこれになります。本気で民間試験を採用し不公平にならないようにするなら、1社のCBT試験を採用すべきです。

もちろん厳正なコンペを行って決定します。試験会場は、各高校のPCルームです。会場費用はかかりませんし、第三者の試験監督が立ち会えばセキュリティも確保できます。自分の通っている高校で受験できるのですから、受験のために遠出する交通費は必要ありません。また、大学入試専用のテストを設定すれば、何回もお試し受験できるメリットをなくすこともできます。高校に通っていない大検資格者は、最寄りの高校で受験可能にすれば不公平はなくなります。今すぐできるのかということですが、全国規模では無理です。だから、ビジョンを明確にして準備する必要があるのです。5年後にどのように試験を実施するのか、2020年は構想をまとめる重要な年になるでしょう。

ところで校長先生、2020年度からの民間試験活用がなくなって、ホッとしていませんか。たしかに早急な民間試験対応の必要はなくなりましたが、高校における英語4技能がなくなるわけではありません。2022年に実施される新学習指導要領では「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」を働かせ、情報や考えなどを的確に理解したり適切に表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図るために必要な「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の資質・能力を更に育成することを目指す、としています。これはつまり、英語でディスカッションして英語でプレゼンテーションできる能力を育成することを意味しています。大学入試の民間試験がなくなっても、「英語4技能」を学ぶためのカリキュラムはすぐに必要になります。

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山口 時雄(やまぐち ときお)

ICT教育ニュース 編集長


日本大学法学部新聞学科在学中から映像業界で活動。

フリーの映像作家を経て、1986年(株)フレックス入社。

NTT関連の広報活動、通信イベント等多数参画。

1990年~93年テレビ朝日「ニュースステーション」ディレクター。

1994年~フレックス報道担当取締役。2003年、メディアコンサルタントとして独立。

2013年~現職。

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