編集主幹のダーツの旅

本紙編集主幹 千葉 誠一(ちば せいいち)

本紙編集主幹の千葉誠一が地域ごとの私塾事情を探るため、ダーツが刺さった地域へ赴く新連載!各地域で活躍を続ける塾や、珍しい取り組みを行っている塾などに取材を敢行。ローカルな運営法の中に、塾で生かせるヒントがある!?

いろんな塾のいろんなイマが見えてくる

【私塾REAL】Vol.34 EdTechの力で、一人ひとりに最適な学びを、STEAMの学びで、一人ひとりが未来を創る当事者(チェンジ・メイカー)に

経済産業省の中に教育産業室があり、その室長が浅野大介氏だ。ここ数年、塾の会合にも出席し、「経産省の中の文科省」とも言われるが、文科省が方向性を示すところとすれば、教育産業室はそれを具体化して実証実験を行うところとも言える。教育サービス業界が今後生き残るためのヒントもそこに示されているのかもしれない。浅野氏に経産省で取材した。

 

リアルな社会的課題の解決に必要な学びとは何か?

経済産業省 商務・サービスグループサービス政策課長 (併)教育産業室長
浅野 大介 氏

千葉 経産省HPで「未来の教室」ビジョン(経産省「未来の教室」とEdTech研究会)を拝見しましたが、文科省の教育改革との一番の違いはどのような点でしょうか?これだけ見るとまるで文科省の仕事のように見えますが。

浅野 文科省の教育改革のメッセージはやや抽象的で難解なものですが、個別最適化という意味において、私たちのメッセージはそれをより具体化する内容になっています。たとえば、現在進行形の「移動革命」において、電気自動車、自動運転、カーシェアリングなどを支えるものとは何か?AIは行列や漸化式・確率・統計などの総体であり、サイバーセキュリティにも数学化が必要です。つまりリアルな社会的課題の解決に必要な学びとは何かを確認して学ぶことが大事です。

これまではとりあえず数学でも理科でも勉強して就職に有利な大学を目指すということが主流でしたが、私たちとしては、未来社会に向けて何を作っていくのか?どんな知識や学びが必要なのか?学びをSTEAM化することを目指しているのです。次の学習指導要領に期待はしていますが、その真意は全国の教育現場に浸透していないかもしれません。しかし、やろうと思えば明日からでもできるわけで、私たちの進める「未来の教室」は「明日の教室」と言い換えてもいいのです。すぐにやれることばかりなのですから。

 

「新しいビジネスドメイン」とは何か?

千葉 STEAM教育とは「Science, Technology, Engineering, Art, Mathematicsの横断教育」ですが、経産省の「STEAMライブラリー」「STEAM学習センター」の狙いと具体化について教えてください。

浅野 前述した移動革命、医療や農業など変わっていく社会のイメージを捉えて、そのプロトタイプを作っていくような学びに変える必要がありますが、それを新しい民間教育のビジネス領域にしてみたい。ここでは、現行の塾の役割をはるかに超えたものになるかもしれません。これから必要になる学びのコンテンツを提供していくために、私学や塾、そして各地の大学などに共鳴していただき、ライブラリーや学習センターという形で、新しい学びを作っていってほしいと思っています。

 

生徒が自分の学びを構築

千葉 「学びの自立化」と「個別最適化」の中で、幼児期から「個別学習計画」を策定し、蓄積した「学習ログ」をもとに修正し続けるサイクルを構築・・・とありますが、これは具体的にはどのような取り組みとなるのでしょうか?

浅野 これまで一斉指導でやってきたわけですが、これからは個々が選んだ個別の教材による学びの個別化の流れの中で、自分で学びを管理し、生徒一人ひとりが自分の学びを構築していくことが大事だと考えます。

千葉 これまでの通信簿の評定からどう変わるべきなのでしょうか?

浅野 評定ではなく評価になりますね。自分の学びの弱いところを理解して学びを構築していく。ABCという評定ではなく、目標に向けて、限られた期間に何を学ぶべきか、自分の学びを管理して評価した上で新たな学習スタイルを構築していくのです。

 

生徒1人に1台のパソコンの配備を早く!!

千葉 「新しい学習基盤づくり」の中で、学校(公立と私立)、そして民間教育(塾と予備校)のそれぞれの役割にどのように関与・助言、支援されていくのでしょうか?

浅野 生徒1人にパソコン1台(※)と高速インターネットの環境は、全国の学校に早急に配備すべきだと思います。これが最低限であり、先生も大変ですが、先生ではなく生徒に合わせて、できれば2年、遅くとも5年の間に実現したい。

※11/19西村康稔経済再生相が「学校で児童・生徒が1人1台のパソコンを使える環境を整えるための予算を、とりまとめ中の経済対策に盛り込む」と明らかにした。ICT(情報通信技術)の教育機会について地域間格差を是正したり、国際競争力を強化したりすることが狙いだという。

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