編集主幹のダーツの旅

本紙編集主幹 千葉 誠一(ちば せいいち)

本紙編集主幹の千葉誠一が地域ごとの私塾事情を探るため、ダーツが刺さった地域へ赴く新連載!各地域で活躍を続ける塾や、珍しい取り組みを行っている塾などに取材を敢行。ローカルな運営法の中に、塾で生かせるヒントがある!?

私塾のトップに聞く:高宮 敏郎 先生 SAPIX YOZEMI GROUP共同代表 学校法人高宮学園 代々木ゼミナール副理事長【SAPIX YOZEMI GROUP】 東京都

【SAPIX YOZEMI GROUP】英語4技能延期、記述式白紙の要因を検証し教育現場の混乱を収束させるべきではないか?!

英語4技能試験導入を延期し、記述式問題導入を白紙に戻した文科省。システムトラブルを回避できるぎりぎりのタイミングだった。2020年度より小学校から順に実施される新しい学習指導要領への対応でも課題は多く、教育現場では、これからの高校3年間のカリキュラムが組めなかったり、プログラミングや地理総合を中心とした指導ができなかったりなどの混乱を招いている。
迷走する大学入試改革を中心に、高宮敏郎副理事長に取材した。

代ゼミサテラインとSAPIXは30周年

千葉 2019年はどんな1年でしたか?

高宮 昨年はSAPIX YOZEMI GROUPにとって、節目の年となりました。代々木ゼミナールは1957年に創立され、1989年から衛星を利用した映像授業「代ゼミサテライン」を始めました。また、同じ年、中学・高校受験のSAPIXが創立され、それぞれ30周年を迎えました。SAPIXを運営する株式会社日本入試センターの本社ビルも竣工しましたので、次回は、是非、そちらに来てください。

 

教育現場が混乱している・・・

千葉 教育改革の中で、新テストにおける英語4技能の民間テスト導入延期や記述式問題導入を白紙に戻すことなどが文科省から発表されましたが、これはどのような影響があるでしょうか?

高宮 これまで文科省からの情報発信が遅れ気味だった上に、不確かなリーク記事も多く、教育現場は振り回されました。昨年、170を超える高校を訪問しましたが、新テストに対する不安を強く感じています。1990年に始まったセンター試験は、今年で最後になります。一連の改革が頓挫する中、センター試験をなぜ変えなければいけないのか?という議論もありますが、元に戻したくても作問や受験生への告知が間に合わないので難しいという状況です。まさに「前門の虎後門の狼」ですね。

今年1月に設置された「大学入試のあり方に関する検討会議」では、なぜ変えなければならないのか?そしてなぜ延期せざるをえなくなったのか?についてきちんと検証していただきたいです。今回の決断自体はズルズルと引き延ばされなかったので良かったのかもしれませんが、高3生や高卒生の進路に少なからず影響があったことは事実です。早く検証して道筋を決めないと、同じことが繰り返されるのではないかと心配しています。一生懸命に勉強している子ども達の不安を早く払拭していただければと思います。

千葉 見切り発車してしまうとシステムトラブルなどの心配もあったのでしょうね?

高宮 英語4技能試験では、小規模ではありますが、実際に機器のトラブルが発生していますし、記述式問題の採点については事前準備にもっと時間をかけた方が安心だったと思います。英語成績提供システムの開発も予定より遅れていたと聞いています。

千葉 東京都では、2019年11月に中学3年生を対象とした英語のスピーキング力を測るプレテストを実施していますね。

高宮 はい。プレテストは2020年末に8万人規模でもう一度実施され、2021年には、都立高校入試の一環として中学3年生全員が受ける予定です。プレテストを受けた生徒の話を聞くと、学力上位の生徒にとっては簡単すぎるレベルだったようです。一方、東京都の島嶼部の生徒も受けてもらわないといけないので、実施にはかなりのコストがかかります。学力中下位の生徒が全入時代になっていく中で、今後、その必要性が議論されるかもしれません。

高校も多様化したニーズに対応したコースで生徒を受け入れ、世間では様々な側面で学力診断したりしていますが、教育改革では因果関係を見極めて、突き詰めた教育議論が必要なのではないでしょうか。

千葉 現実的に新高3生の指導はどうなるのでしょうか?

代ゼミタワーの「日日是決戦神社」

高宮 記述式問題や英語4技能試験は先送りされましたが、地理総合やプログラミングなど新学習指導要領への対応でも、どうやって教えればよいかが定まらず、教育現場は混乱したままです。高校での指導内容と大学入学者選抜はセットなので、本来は入試改革の一部をストップさせて、センター試験だけを切り出して改革すべきではなかったのではないでしょうか。すでに新テスト対策のために、本番とは違う試験時間の模試を受けている生徒もいます。我々としては、正確な情報を迅速にお伝えしたいと考えておりますし、各教科の学びの本質は変わらないので、落ち着いて勉強して欲しいと思います。

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