【森上 展安】私学募集逼迫時代にこそ―『シン・ニホン』のすすめ

前号で安宅SFC教授の著作による『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』(NewsPicksパブリッシング)を一言ご紹介したが、この1カ月でコロナの脅威すさまじく、みるみるうちに日本も世界もリーマンショックを上回る不況に突入したと認識されている。

特に4月7日から実施された7都府県における緊急事態宣言によって不況が長期にわたる可能性も現実味を増しており、中学受験は家計に依存していることから不況時には当然ながら受験生の減少が過去にはおきた。これは前号でも述べたようにリーマンショックの時の落ち込みが最大で2割であったことからも明らかだ。

しかもこの2割減少というのは2月1日の受験者数合計の話で、個々の学校についていえば中下位校で5~6割は減少しており、もともと募集状況が芳しくなく、1クラス維持が精いっぱいという状況においこまれた学校が少なくなかった。

その多くが学校数の多い女子校だったことは周知の事実だ。この度のコロナショックは、まずはこうした女子中下位校を直撃するであろうことは容易に予想される。

ただ前回のリーマンショックの後に東日本大震災が起こり、もう一段の減速があったから、この2割の減少は東日本大震災を含めての減少であったかもしれない。

この東日本大震災がもたらした影響のひとつが都心の上位中堅校の減少だ。帰宅難民化した映像がくりかえし流されたこともあり、千葉、神奈川から東京の学校に進学する流れが一旦沈静化したのがショック前半の2011~2015年の流れだった。

ここは今回のコロナショックとは違うところだ。コロナショックでは公共交通機関利用による混雑時の3密(密閉、密集、密接)を避けて行動することが強調されたし、今もされている。おそらく今後も同様だろう。

そうなると通学距離もさることながら通学方向が問題になる。

つまり都心から郊外に向かうベクトルならばこの3密は比較的避けやすい、ということがある。そう言えば、千葉の幕張、埼玉の栄東、三多摩の桐朋、神奈川の聖光はこのベクトルの強い学校としてすぐ思い浮かぶ。もちろんどのように減少の方向が向かうか予断を許さないが、2008年と2020年の2月1日の実受験者数はほぼ同じだったから、この間の浮沈がどういうものであったかをふりかえっておさえておきたい。

 

共学化、国際化、入試の見直し

それはすなわち2008年はリーマンショックの年だったということもあるが、当時はまだ女子有力校に受験生が集まっていてネームバリューがあるとされる伝統校に、それなりの受験生がいるということが最も現状と違うところだ。

また、新興校として女子校が共学化したり、国際化を打ち出して人気が出ることは始まっていて、そこは動きとしては現在と同じだ。しかし、2008年になくて、2020年にたくさんの受験生が集まっているのは実は中下位校の新しい入試だった。

そこには適性型検査入試、英語入試などをはじめ、いわば30年ほど続いてきた中学受験の上位校を中心とした入試とは異なるものだ。ただこれらの入試も含めて、これからの入試政策はこれでよいのか、もう少し言うとこれからの中等教育はこれでよいのか、ということがないと、再び家計急変による需要減退で私学はまた半分の生徒減に追い込まれるのではないか、それを危惧する。

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森上 展安(もりがみ のぶやす)

(株)森上教育研究所 所長


1953年岡山県生まれ。早稲田大学法学部卒業。

東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾「ぶQ」を経営後、88年に(株)森上教育研究所を設立。

中学受験、中高一貫の中等教育を対象とする調査・コンサルティング分野を開拓した。

私塾・私学向けに『中学受験と私学中等教育』を月刊で発行している。

中学受験生の父母対象に「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」セミナーをほぼ毎週主催。

著書に『10歳の選択 中学受験の教育論』、『中学受験入りやすくてお得な学校』(いずれもダイヤモンド社刊)。

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▼『森上 展安』の過去記事を読む

【2020/4月】コロナショックはどのように起きるか2020年、首都圏中学入試状況速報(その2)

【2020/3月】リーマンショック前に受験者数戻る 2020年、首都圏中学入試状況速報(その1)

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