編集主幹のダーツの旅

本紙編集主幹 千葉 誠一(ちば せいいち)

本紙編集主幹の千葉誠一が地域ごとの私塾事情を探るため、ダーツが刺さった地域へ赴く新連載!各地域で活躍を続ける塾や、珍しい取り組みを行っている塾などに取材を敢行。ローカルな運営法の中に、塾で生かせるヒントがある!?

私塾のトップに聞く:清水 貫代表 【誉田進学塾グループ】 千葉県

【誉田進学塾グループ】究極の危機管理 同業他社との情報の共有に感謝

昨年は度重なる台風の被害、そして今回は新型コロナウイルスの感染拡大により、多大な影響を受けている千葉県。そんな中、誉田進学塾の清水貫代表は、全国の同業他社との情報共有により、最悪の事態を回避してきた。
感染不安と学校休校がピークの中、誉田進学塾の現状の課題と今後の方向性について、清水貫代表に誉田進学塾おゆみ野駅前校でインタビューした。

女性社員を増やしたい

千葉 教室数・小中高の生徒数・正社員数・アルバイト講師数など、現在の塾の規模を教えてください。

清水 創業42年になりました。高校受験部門が8校、大学受験部門が6校、中学受験部門が2校ですが、そのうち高校受験と大学受験の併設が2か所、高校受験と中学受験の併設が1か所、そして大学受験と中学受験の併設が1か所あるので計12拠点です。また、大学受験の分室が1か所あります。これらに加えて1か所、今年度の開校に向けて準備中です。生徒数は年度末の2月で約1,800名です。

基本的にはJRの駅近くにありますが、京成線の沿線にも2か所あります。大学受験は東進衛星予備校、中学受験は四谷大塚のYTnet提携塾です。東進衛星予備校は加盟して11年、四谷大塚はそれ以前、YTnet提携制度が始まる前の公認準拠塾時代からです。

正社員は67名でここ数年男性の割合が少しずつ高くなっているので、これから女性が増えてくれればいいなと思っています。生徒対応、保護者面談などのために、男女のバランスを整えたいのです。

授業担任をする非常勤講師はいません。採点やテスト監督、そして質問対応をするチューターとして80名ほどが登録していて、ほとんどが当塾の卒業生です。

 

千葉県の大半は東京都心の大学に通うのは難しい

千葉 現在一番注力している部門はどの部門ですか?また、戦略的に最も重視している地域や沿線はどこですか?また、地域的な教育熱の違いはありますか?

清水 これまでの校舎展開のほとんどは保護者からの要望で開校しています。

JRの外房線沿線で要望が増えればそれに応えて出すという感じですね。うちの地域は、首都圏の端にあたり、駅間が5キロもあるため、1つの校舎に通う生徒はかなり広い範囲から来ています。千葉市、市原市、大網白里市、茂原市、佐倉市、さらに長生郡、夷隅郡、山武郡など・・・家が遠い生徒は車での送り迎えが必要なので、家の近くでの開校を求められますね。

千葉 首都圏から近いというイメージがあるのですが、その限りではないのですね?

清水 千葉市でも美浜区の幕張地区など、東京に近い地域は東京志向が強く教育熱も高いのですが、うちのエリアは、首都圏の外縁に位置しています。実は千葉県は、全体の75~80%がいわゆる「田舎」ですね。例えば、国立大学は通学できる大学が限られていて、東京大学か千葉大学、そうでなければ下宿生活になります。都内有名私大でも通学圏で4年間過ごせるところは限られていて、無理すれば通えないこともないですが、定期代も高額になり、親としては悩ましいところでしょう。千葉県でも大半が、都心までは意外に遠いのです。

 

学力上位の進学塾に特化している理由とは?

千葉 これからどんな塾になっていきたいですか?

清水 特定のマーケットにセグメントとした専門店型というのでしょうか、習い事もICTもほぼ無しで、いわゆる進学塾に特化していますが、生徒は学力上位層が中心でレベルの高い志望校に絞った指導を行っています。規模の拡大を追うのではなく、特定のマーケットに対しての高い顧客満足を追求しています。したがって、その中でどれだけ競争優位性を持てるかが生き残りの鍵になります。校舎も指導形態も一定水準を保ちながらでしか広げられないのです。

千葉 そういえば個別指導部門はありませんね。

清水 はい。現状では、私たちの納得できる形のものを実現するのは難しいと考えているからです。まだまだ私たちは力が足りないので、現在はそれよりも、大学受験で要望の強いエリアに校舎を出すとか、中学受験をやってほしいという内部からの要望で開校するとか、そういう展開の仕方を優先したいのです。

千葉 千葉県の中学受験はどんな傾向がありますか?

清水 全国トップクラスの難関校である渋幕を筆頭に、首都圏で最も入試の早い難関校の市川、医学部進学実績のある東邦大東邦、大学進学実績を伸ばしている昭和学院秀英など4校が中心で、それに続くボリュームゾーンの上位に相当する学校が少ないのが特徴です。東京・神奈川の入試解禁日より10日ほど早い時期に、人気校の入試が3日間続きます。ここに県外から都内御三家を狙うレベルの試し受験組も加わって、受験生が集中する形になり、力のある生徒以外は3連敗する状態が続いています。県内に、比較的入学しやすいのに卒業の時には難関大学に合格できるような私学が増えてくれば、県内の東京から遠い地域の中学受験ももっと盛り上がるかもしれません。

千葉 中学部から高校部への継続率はどれくらいですか?

清水 40%程度ですが、学年が上がると少しずつ戻ってきて60%前後になります。進学時にあまり無理に継続させると、生徒たちのモチベーションが薄まることにもなりますから、あまり強く引っぱることはしていません。ただ、スタート時から勉強し続けた生徒が一番力は伸びるので、できれば過半数は継続させたいと思っています・・・しかし今年はこのような状況なのでどうなるか全く見通せませんね。

 

プラットフォームとして優れているツールが魅力的だが・・・

千葉 いよいよ教育ICT時代ですが、デジタルとアナログの融合についての取り組みを教えてください。

清水 生徒への直接のインターフェイスでは使っていませんが、教務等の裏側の仕組みとしては積極的に活用しています。たとえば、毎週実施している塾内テストでは電子採点を活用しています。生徒の入退室管理はLINEとの連携もできる非接触型ICカード方式で、メール既読の確認もできます。今回の状況で、指紋認証式は消毒ができず困ったという話を聞きましたが、非接触型ICカード方式は感染予防にも適しています。社員やアルバイトの入室管理などにも活用しています。また、社内拠点間のネットワーク構築やオンライン型の授業監視カメラなども積極的に取り入れています。

今回の騒ぎに対応して、映像配信も準備していますし、いくつか学習アプリも検討しているところです。どこまで本格的に導入するかどうかは分かりませんが、プラットフォームとして優れているものを使って、その上での独自コンテンツで勝負できるものがあれば考えてもいいと思っています。

千葉 ネットにどれだけ投資できるかが問題ですよね。

清水  そうですね・・・AIは質を上げるために相当量のデータが必要ですから、ある程度低価格で、先にユーザー数を多く獲得する方が有利でしょう。また、AIと呼んでもいても、現状では疑似的なものが少なくないのでその見極めも大切だと思っています。そして、まだまだアナログで勝負できる余地がたくさん残っていて、その技術革新の中にもチャンスはあると考えています。

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