【森上 展安】中学受験の入試をどうすべきか

文科省は国公私立大学に新型コロナウイルスの感染拡大で高校生のスポーツ大会や行事の中止が相次ぐ事態を受け今秋から大学のAO・推薦入試についてオンラインによる方法など選抜方法を工夫するように要請すると読売新聞が5月14日付朝刊で報じている。

更に同省は同月13日には都道府県教育委員会に高校入試に関して出題範囲を狭めたり問題を選択制としたりするなど必要な対応を取るように促したと報じている。私立中学高校にも同様の対応を求めているとしている。

 

私立中学高校入試はどう変化するか

文科省がこのように要請したからといって必ずしも私立中学高校が直ちに変化するということではない。何故なら文科省の権限は都道府県教育委員会には及ぶが、私立中学高校については「所轄」するに過ぎないからで、従ってあくまでも要請であり要望であって強制力はない。

とはいえ受験生が学校で学ぶべき3月から5月の3ヶ月については、とりわけ公立小中学校在籍者は学校が開かれず、通常の学習が十分にできていないのは事実。

従って一学期の学習範囲を夏休みや二学期に学ぶにせよ二学期と三学期の学習はこれを受けて圧縮せざるを得ない。勿論、遠隔授業で十分前に進め得た児童もいたかもしれないが、大半は授業がストップしたので公平性を期すためには多数に合わせる必要がある。

文科省の要請は大学の推薦入試について、実技や面談をオンラインで試みるように「工夫」も奨励していて、一歩踏み込んだ内容になっている。実際問題として全国大会が開催されないスポーツ・芸術大会が多く、このためにその実績を提出することができなくなっているから、これをオンライン動画や面接でプレゼンをすることで良しとせざるを得ない。

推薦入試に関しては大学のみならず高校入試でも大きい分野を占めるため「工夫」してオンライン選抜をすべきだろう。

一方、中学入試にあっては、従来は学力一本で推薦入試は制度としてはないが、実際は帰国生入試や様々な新しいタイプの入試―プレゼンテーションや思考力入試など―にあっては、要は推薦入試と同じでペーパーテストだけでは測れない学力を評価しているのだから、そのパフォーマンスが優れていればよく、それ自体はオンライン入試と相性がよい。とはいえ問題が外部に流出したり、外部と連絡を取ったりという公正さという点でオンライン選抜が不安を抱えているのは事実。

ただ、そうした不安を少なくしさえすればテレワークと同じくテレスタディは可能なことであり、メリットの方が大きい。そう文科省は考えていると思われる。

 

選択問題と出題範囲の減少でできる時短

まず上記の例示で出題範囲の減少といい、選抜問題の作成といい、いずれもまさに学習した範囲に即して学習の達成度を見ようとするもので、今回はいずれの方法を取るにせよ出題対象の範囲が従来の三分の二程度になっているわけで、そうなれば従来が60分なら40分にもできるということだろう。

つまりこの具体化を時短として実現すれば新型コロナ感染対策としての三密を避けるために密閉対策に30分以上の滞在は避けるということがあり、仮に40分に時間短縮が可能なら20分を2回とするなり、最初から30分で設計することがやりやすくなる。

また、選択問題を受験生に課す場合は、例えば午後入試などの一科目を準備するというケースが当たるだろうか。これも30分以内を単位に構成することになるだろう。

また、一科目にせよあるいは出題範囲を絞るにせよ、もう一つの時短の仕方がある。というのも合否を分けた問題を抽出してその通過率を毎年ウォッチすることは学力検査として有意義だと思う。つまり、合格した人は解けたが不合格だった人は解けなかった問題を選び出して、その近辺の難度の問題に絞って試験するのだ。これだと短い時間で「選抜」が可能になる。

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森上 展安(もりがみ のぶやす)

(株)森上教育研究所 所長


1953年岡山県生まれ。早稲田大学法学部卒業。

東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾「ぶQ」を経営後、88年に(株)森上教育研究所を設立。

中学受験、中高一貫の中等教育を対象とする調査・コンサルティング分野を開拓した。

私塾・私学向けに『中学受験と私学中等教育』を月刊で発行している。

中学受験生の父母対象に「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」セミナーをほぼ毎週主催。

著書に『10歳の選択 中学受験の教育論』、『中学受験入りやすくてお得な学校』(いずれもダイヤモンド社刊)。

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