【出口 汪】コロナ後の世界

コンピュータとネットが社会を変えた

私たちの生きる時代は、想像を超えるスピードで変化を遂げている。

コンピュータとインターネットが私たちの生きる世界を大きく変えたことは言うまでもない。掌にあるスマホで動画を見ることができて、買い物ができて、ホテルや飛行機を予約できて、世界中の人とコミュニケーションがとれるなんて、数年前までは思ってもみないことだった。

今を代表する企業であるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのいわゆる「GAFA」は、全世界的になくてはならないサービスを提供しているが、4社ともに私たちが子どもの時代には存在していなかった。これらの企業はネット社会のプラットフォームを作り上げることで、アッという間に世界を席巻してしまったのである。

かつては隆盛を誇ったエネルギー産業や自動車産業、製造業はなんとか生き延びることに青息吐息の状態である。しかも、以前は国境を越えて商品やサービスを提供する会社はごくわずかだったが、ネットの王者たちは世界を瞬時につなげてしまった。クルマの自動運転もすでに秒読み段階に入っている。まさに、私たちは大変革の時代のさなかを生きているのである。

しかし、未来を生きる子どもたちは、それ以上に大きく変貌を遂げた世界を生きていくことになる。

 

あらゆるものを自律化するAIとロボット

産業革命については、おそらく社会科で学習したことがあると思うのだが、実は教科書に書かれている以上に世の中を大きく変えてしまう。

第一次産業革命は18世紀半ば、イギリスでの蒸気機関の開発により始まったのだが、その結果、工業化・都市化が進み、蒸気機関の発展とともに交通革命も起こる。それは近代の始まりであると同時に、植民地時代の幕開けでもあった。

第二次産業革命は19世紀後半から始まるエネルギー革命である。鉄鋼、石油、電気などにより大量生産が可能になり、電話、電球、蓄音機などが次々と誕生する。そのために、二つの世界大戦では戦車、戦艦、戦闘機などが誕生し、膨大な死傷者を出したことは言うまでもないことである。

第三次産業革命はパソコンにスマホ、ネット社会の実現である。ほんの少し前までは電車の中で多くの人が新聞や本を読んでいたものだが、今やほとんどの人がスマホをいじっている。これだけとっても私たちの生活のありようが大きく変貌を遂げたことが分かる。

では、第三次産業革命と第四次産業革命の違いは何だろうか。

コンピュータの出現によって、あらゆるものが自動化されたのが第三次産業革命である。これに対して、第四次産業革命とはAIとロボットによる根本的な社会の構造変化である。コンピュータがあらゆるものを「自動化」するのに対して、AIやロボットは人工頭脳によって「自律化」していく。AIもロボットも自分で判断できるようになるのだから、多くの仕事では人間が必要なくなってしまうのである。

現実に、三大メガバンクがここ数年で3万2000人のリストラを発表している。なぜかといえば、窓口業務がやがてAIに変わるからである。キャッシュレス決済がスタンダードになってくると、駅前の銀行はどんどん消えていくことだろう。

保険会社も大変である。売り上げの4割から5割が自動車保険だが、自動運転が標準化すると自動車保険は不要になる可能性もある。

医者、弁護士、公認会計士、税理士、銀行マン、証券マン…。大学生のあこがれの職業に従事する人が、ゼロにはならなくても、相当数減るだろう。検診はほとんどAIが担当する。薬のチョイスも同じで、手術はロボットがやるようになる。

今、盛んに文科省が小学校からプログラミングの授業を取り入れようとしているが、将来プログラミングもAIがすべてやってしまうことになる。今の子どもが社会に出る頃には、今とはまったく異なる世の中となっているのである。

そして、記憶と計算はコンピュータの仕事。どれほど優秀で、どんなに努力をしても、記憶と計算だけはコンピュータに絶対勝つことはできない。それなのに多くの塾は未だに旧態依然の教育から脱却できないでいる。

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出口 汪(でぐち ひろし)

株式会社水王舎 代表取締役


関西大学大学院博士課程単位修得。代々木ゼミナール、東進ハイスクールの講師を歴任し、「国語の文章を論理的に読解する手法」を授業に取り入れ、一躍カリスマ講師としての人気を博する。その後、1993年には「総合予備校S.P.S」を、2000年には教材開発・出版を目的とした「水王舎」を設立する。

2003年に発行した「論理エンジン」は、国語を感覚的に解くのではなく、筋道を追って論理的に解くことの重要性を説き、全国公立私学250校以上が採用するなど、大ヒットを記録する。

広島女学院大学客員教授、基礎力財団評議員。著書『はじめての論理国語(水王舎)』『出口先生の頭がよくなる漢字(水王舎)』『知っているようで知らない夏目漱石(講談社)』など著書多数。

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