【川山 竜二】おさえておきたい「9月入学」論

繰り返されてきた「9月入学」論

大学をはじめ学年暦の始まりを9月にする「9月入学」論の議論が注目を集めている。コロナウイルス感染症(COVID-19)の広がりにより緊急事態宣言が発出され、学校教育機関のほとんどが休校措置をとっているためだ。

この「9月入学」論は、この緊急事態宣言以前からなんども議論されてきた。1987年の臨時教育審議会の第4次答申から始まり、2007年には経済財政諮問会議などでも提唱されてきた。最近では、2012年に東京大学が秋入学への移行を検討したことをメディアが報道したが導入には至っていない。本稿では、それぞれが「9月入学」について考える際のポイントを歴史や法令上の問題についてもおさえておきたい。

 

指摘される問題点

「9月入学」の大きな課題としてまずギャップイヤーの問題が挙げられる。移行期間に生じる空白の学年暦を学生たちはどう過ごしたらよいか。また一時的にその学年に属するものが増えれば教育機関に過度な負担がかかり、教員の不足や財政的な問題も発生することになる。他方で、就職活動時期についてもギャップイヤーの影響を受けることになる。

「9月入学」のメリットとして挙げられる一方、課題にもなるのが留学だ。たいていの国々は「9月入学」制度を取っているため日本から海外へも、海外から日本へも留学が活発になるといわれている。しかしながら、日本の教育に留学したくなる魅力があるのかというのは「9月入学」とは別問題である。

 

現行制度でも「9月入学」は可能?

制度面で言えば、実は大学は既に「9月入学」に移行可能だ。「学校教育法施行規則」という文部科学省が定めた省令によれば、第百六十三条に「大学の学年の始期及び終期は、学長が定める。」としている。つまり、大学であればそれぞれの大学長が入学時期を4月ではない任意の時期に定めることが可能なのである。しかし、高等学校以下の学校は、同規則第五十九条に「小学校の学年は、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。」と定めており、幼稚園も高等学校もすべて準用することになっている。すなわち、幼稚園から高等学校に至るまでの学校種については、法令で4月1日に学年が始まることを定めている。このため、日本の教育機関にすべて「9月入学」論を適用させようとすれば、省令の改正が必要だ。

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川山 竜二(かわやま  りゅうじ)

学校法人先端教育機構
社会情報大学院大学研究科長・教授

文部科学省
持続的な産学共同人材育成システム構築事業委員
実務家教員COE 事業責任者


専門学校から予備校、大学院まで様々な現場にて教鞭を執る実績を持つ。
現在は、「社会動向と知の関係性」から専門職大学、実務家教員養成の制度設計に関する研究と助言も多数行なっている。そのなかで、リカレント教育やラーニング・ソサエティ、知識3.0を提唱。現在の関心のキーワードは、実践の理論・高度専門職業人。

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