【出口 汪】コロナが変えた教育産業

休校措置をとっていた学校の多くは講義を次々と再開したが、分散登校、時差通学、短縮授業などを余儀なくされる場合が多く、そのしわ寄せが教育産業にも押し寄せてくることになる。

私が経営する水王舎の事例を基に、具体的に考察してみることにする。

 

コロナ後の働き革命

主に学校用の教材である論理エンジンと、塾対象の論理エンジンキッズは、例年三月、四月採用に向けて、この時期大増刷することになる。ところが、多くの学校、塾の休校措置によって、注文数が大幅に減少した。

また普段通りの受注をした学校、塾においても、教材費を生徒から徴収することができず、入金が大幅に遅れることになった。

今年は休校措置や分散登校のため、授業時間が確保できず、正規のカリキュラムをこなすのに精一杯で、論理エンジンを実施する余裕がないといった学校も多く見られた。

当然、弊社の収入は減少し、更に、入金が遅れるという事態となった。

しかも、塾にとっては大切な募集時期にコロナ禍に襲われたわけだから、多くの塾は厳しい状況にあると思われる。私の耳に入った情報によると、大手塾の多くは新規生徒数を大幅に落としたところが多いと聞く。ましてや中小塾や個人塾の経営難は想像に難くない。

これからの夏期講習も、学校の夏期休暇の減少により、例年に比べて厳しい状況になることは明らかである。

弊社のもう一つの柱が「出口式みらい学習教室」のフランチャイズ展開だが、こちらも自粛要請により、生徒募集を中断せざるを得なかった。その結果、二年目の飛躍が厳しい状況となったのである。

しかし、多くの子どもたちはまだ塾や教室等を決定していないので、夏休み前のこの時期に再募集をかけることになるだろう。

こうしたコロナによる危機的な状況は、逆に教育産業のあり方を変えるまたとない切っ掛けとなった。

自粛期間中は、弊社もテレワークを断行したのだが、これは経営者にとって思わぬ効果をもたらすことが多々あった。往復の通勤時間と、それに伴うストレスの軽減だけでなく、残業代や交通費、様々な諸経費の削減につながった。

また拘束時間に対する対価ではなく、結果に対する対価へと、評価体系を変えることが可能になった。小さな社屋であっても、より多くの社員を雇用することも同時に可能になったのである。

自粛規制が解除された今でも、テレワーク、完全な自由出勤、自由な服装と、コロナのおかげで思い切って創造的な空間を構築できたことは皮肉である。

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出口 汪(でぐち ひろし)

株式会社水王舎 代表取締役


関西大学大学院博士課程単位修得。代々木ゼミナール、東進ハイスクールの講師を歴任し、「国語の文章を論理的に読解する手法」を授業に取り入れ、一躍カリスマ講師としての人気を博する。その後、1993年には「総合予備校S.P.S」を、2000年には教材開発・出版を目的とした「水王舎」を設立する。

2003年に発行した「論理エンジン」は、国語を感覚的に解くのではなく、筋道を追って論理的に解くことの重要性を説き、全国公立私学250校以上が採用するなど、大ヒットを記録する。

広島女学院大学客員教授、基礎力財団評議員。著書『はじめての論理国語(水王舎)』『出口先生の頭がよくなる漢字(水王舎)』『知っているようで知らない夏目漱石(講談社)』など著書多数。

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