【川山 竜二】過渡期のブレンディッド・ラーニング

ハードからソフトへ

やや手垢のついた表現を使えば、COVID-19の流行によってICT化が遅れていた教育の領域にも半ば強制的に「オンライン授業化」の流れがきている。他方で、分散登校など日常の学校生活を取り戻そうとする動きもある。これも陳腐な表現であるが、「ピンチをチャンスに変える」がごとく第二波、第三波に備えて教室のICT化を進めるべきだとの声もある。以前も「ICT教育」について言及してきたが、誰のための「オンライン授業」や「学校のICT化」なのかを振り返って考えるべきである。学校や教育のICT化が目的なのではなく学習者主体で皆が等しく学ぶ(一斉に学べるのではなく機会を保障する)ことを達成する手段としてのICT化でありオンライン授業化であることを忘れてはならないはずだ。学校に光回線を敷いたり、生徒一人ひとりにPC1台を割り当てることが目的ではないのだ。

筆者はCOVID-19を授業のオンライン化への契機と捉えるのではなく、もちろん対面授業を単にオンライン授業化するだけを考えているわけではないと思うが、「教育のありかた」そのものを考え直すきっかけとして捉えた方がよいと考えている。この論点も以前述べたことがあるのだが、Society 5.0(超スマート社会)を目指しているにもかかわらず教育の様式がSociety 3.0(工業社会)に留まっていることを指摘した(なんとSociety 4.0の教育様式にもなっていない!)。私たちは依然として工業社会型の教育、つまり生徒たちは同じ年齢で同じ授業を一斉に受けて、等しく学習を進めていくというモデルである。別の言い方をすれば履修主義である。これからますます職業の高度化・専門化が進んでいくなかで、すべての子どもたちがもっている可能性を余すところなく具現化するとしたら、工業社会型の教育モデルで実現することは不可能である。というのも、これは誰もが同意するであろうが、子どもが同じ年にうまれて同じ年齢だからといって、同じペースで学び、将来の夢が同じ(学習ニーズや意欲が同じ)であることはないからだ。子どもによって、理解するペースは異なる。

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川山 竜二(かわやま  りゅうじ)

学校法人先端教育機構
社会情報大学院大学研究科長・教授

文部科学省
持続的な産学共同人材育成システム構築事業委員
実務家教員COE 事業責任者


専門学校から予備校、大学院まで様々な現場にて教鞭を執る実績を持つ。
現在は、「社会動向と知の関係性」から専門職大学、実務家教員養成の制度設計に関する研究と助言も多数行なっている。そのなかで、リカレント教育やラーニング・ソサエティ、知識3.0を提唱。現在の関心のキーワードは、実践の理論・高度専門職業人。

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