【小林 尚】受験生の不安と向き合う

今回は共通テストも迫る中で、受験直前期での生徒との向き合い方について執筆させていただきます。現場の学校の先生方は私以上に生徒指導のプロフェッショナルでいらっしゃるとは思いますが、塾の経営者として少しでも新たな視点が示せればと思います。

 

この時期に生徒が感じる不安

受験が迫るにつれて生徒の集中力は基本的にはどんどん高まっていきます。具体的な志望校や受験日が決定し、大学受験をするのであるという肌感覚が、生徒一人ひとりにとってより鋭利なものになっている事は間違いありません。

しかし生徒によっては本番が近づくにつれて不安感が強くなってしまうケースも少なくありません。具体的に生徒が不安を感じ、相談をしてくるのは大きく2つのパターンに分けられます。それは「進路の変更」「受験校・科目の変更」です。今回はこの2つのパターンについてそれぞれ見ていきたいと思います。

 

大学受験の断念

進路の変更で一番極端な例は、大学受験を断念するという意思決定です。言うまでもなく大学を受験するのはあくまで人生の1つの進路に過ぎず、大学に行かなかったからといって必ず不幸になるとか、良い生活が送れないとか、そういった事はありません。

しかし今まで大学受験に向けて一生懸命勉強していたのであれば、多少の不安感によって受験を断念してしまう事は個人的にはもったいないことだと感じます。

そもそも受験が近づくにつれて不安が大きくなり、どんな生徒でも悩みや課題を抱えているものです。そこで受験を断念してしまう生徒は、基本的に「失敗をしたくない」「失敗から逃げたい」という意識が強い事が多いです。

とはいえ、人間は誰でも失敗するものです。私も今では大学受験を指導する立場にいますが、私自身も大学受験で失敗したことがあります。恥ずかしながら、とある私立大学を受験する際に大学のキャンパス内で試験会場を間違え、全く自分の受験番号と関係のない席に着席し、他の受験生にそれを指摘されて非常に恥ずかしい思いをしたこともあります。その大学はもともと滑り止めではありましたが、結果的には不合格となってしまいました。

そのような、生徒に伝えられるストーリーが誰にでもあるかどうかは分かりませんが、そういった生徒には人生は失敗の連続であること、実際に教える側の人間がしてしまった失敗を語ってあげる事が大切なのではないでしょうか。

 

志望校を大きく変える

進路の変更でもう1つの典型例は、志望校を大きく変えてしまう事です。単純にどうしても学力が及ばない場合や将来本当に勉強したい内容が変わったのであれば、大幅に志望校を変えることもやむを得ない判断かもしれません。

しかしこの時期の受験生は目の前の勉強で視野が狭くなっていることも否定できません。現在掲げている志望校になんとなく届かなそうだから、たまたま見かけた少し偏差値の低い学校に志望校を変えてしまうといった事例もあります。

そんな生徒に必要なのは何よりも客観的な視点です。第三者の目から見て現在の成績や勉強の状況、志望校のレベルや入試の傾向などを踏まえて、本当に志望校を変更するべきなのか、志望校を変更するとしても生徒が掲げている大学・学部は適切なのか、それらを客観的に分析し一緒になって考えてあげることが重要です。

もちろん先生方も忙しい中での進路指導になると思いますが、このパターンの生徒は端的に言えば路頭に迷っている状況なので、できれば優先的に見てあげて欲しいなと思います。

学習塾の世界でもこのパターンの生徒は入試の直前期になるにつれ、たくさん面談をしなければいけない生徒でもあります。その分いろいろな大人からいろいろな意見を言われるので、迷ってしまうことも少なくありません。そういった意味で、生徒がどこを頼るのかという点はあれど、彼ら彼女らにとって一番身近な大人が手を差し伸べられる体制を作っておくべきだと思います。

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小林 尚(こばやし しょう)

株式会社キャストダイス(CASTDICE Inc.) 代表取締役
個別指導塾CASTDICE 塾長


埼玉県出身。私立開成高等学校、東京大学法学部第Ⅰ類卒業。
大学在学中は大手予備校に勤務し、東大・医学部をはじめ多数の難関大合格者を輩出する。また、新規校舎立ち上げに参画し、各種経営指標で全国1位を連続で獲得した。卒業後は経営コンサルティング会社の戦略部門を経て株式会社キャストダイスを設立。新規事業開発、人材・組織変革を専門に3度のプロジェクト表彰を受賞する他、人材関連企業を経営する等、活躍のフィールドは多岐にわたる。
近年ではYouTuberとして、受験・キャリアに関する動画を配信中。開成高校弁論部・コンサルティングで培ったロジカルな指導力を武器に、大学や教育機関での講義・講演・セミナーを実施している。『開成流ロジカル勉強法』(クロスメディア・パブリッシング刊)。

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