【川山 竜二】リカレント教育時代の新しい「学び」への課題―専門職としての教師の学びなおし―

成熟社会の新しい知を求めて

世界の教育は大きなターニングポイントにある。足元の日本だけ見ても入試改革や新学習指導要領の施行など〈こども〉の学びや教育方法が注目されている。さらには感染症の拡大によって、学びの方法すら一変したように思える。

我々が生きる日本社会は、高度に複雑化した社会といってよいだろう。「課題先進国」や「成熟した社会」というフレーズに言い換えてもよい。そこでの問題は、課題もまた複雑化してきている―SDGs、第4次産業革命、人生100年時代、グローバリゼーション、地方創生云々̶ということなのである。こうした直面する課題を解決するために、社会は多様な知やスキルを要求している。新しい課題に直面するたびに、それらを解決する知やスキルが不可欠となるのだから、子どもだけでなく、我々大人もまた常に学びを続けなければならない。学ぶだけではない、その学びから問題を解決する知を生み出していく、そこにリカレント教育の意義がある。これは学びをサポートする担い手である教師も例外ではない。

伝統的に、新しい知を生み出す役割を果たしてきたのは大学だ。ところが、従来の大学の学部に代表される、既存の学問体系に依拠した知識生産だけでは、社会からの多様な知やスキルの要求に対応できなくなってきている。昨今、大学改革が叫ばれているのは、社会の要求と学術が乖離している、というところに端を発しているといえる。

社会から要求される多様な知やスキルの需要に応えていくためには、社会のなかに分散し、埋め込まれている知やスキルを掘り起こして、新しい実践知=専門知として、誰もが利用できるかたちにしなければならない。

 

専門職としての教師と実務家教員の役割―教員ではない教員?

そこで、社会経験をもつ企業人(あるいは広く実務家といってもよい)が、多様な知やスキルを実践知=専門知にする担い手として期待されている。現在、企業などでの経験をもとに大学等の教壇に立つ方々は、実務家教員と呼ばれている。これからこの実務家教員の役割は、ますます大きくなってゆくと考えられる。

もちろん、実務家が経験したことがそのまま即、実践知=専門知になるわけではない。これまでの専門分野の知の結晶である理論と、実務家が経験してきた経験知を融合させながら、新しい実践知=専門知を形成していくことが、まさに求められているのである。こうした実践と理論の融合こそが、現在の複雑化した社会課題を解決するための「新しい知」となってゆくはずだ。実務家教員は、これまでの経験だけでなく、どのようにしたら学びの成果が深くなるのかを考えなければならない。

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川山 竜二(かわやま  りゅうじ)

学校法人先端教育機構
社会情報大学院大学研究科長・教授

文部科学省
持続的な産学共同人材育成システム構築事業委員
実務家教員COE 事業責任者


専門学校から予備校、大学院まで様々な現場にて教鞭を執る実績を持つ。
現在は、「社会動向と知の関係性」から専門職大学、実務家教員養成の制度設計に関する研究と助言も多数行なっている。そのなかで、リカレント教育やラーニング・ソサエティ、知識3.0を提唱。現在の関心のキーワードは、実践の理論・高度専門職業人。

▼『川山 竜二』の過去記事を読む

【2020/10月】学び続ける教師のために

【2020/9月】トリガーとしてのテクノロジー

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