【小林 尚】真の映像授業活用法
今年はコロナウイルスによる休校騒動をきっかけに、教育業界でもオンライン化や映像授業の活用がいっそう進んだ1年になりました。
現場で指導されている先生方はスタディサプリやYouTubeのおおよその内容を確認するだけでなく、実際にご自身で中身をご覧になったり、場合によっては生徒指導に活用したりしたケースもあったのではないでしょうか。
今回は私自身、オンラインでの学習塾を経営している立場から本当に効果的な映像授業の活用方法について述べようと思います。
陥りがちな罠
映像授業の利便性が非常に高いことは、もはや言うまでもありません。インターネット環境さえあればパソコン、タブレット、スマートフォンのあらゆるデバイスからコンテンツにアクセスすることができます。さらに講義を担当している講師は厳選されていることが多く、一般的に行われている学校の授業よりも「わかりやすい」ものとして作られているケースが大半です。
しかし生徒によっては本番が近づくにつれて不安感が強くなってしまうケースも少なくありません。具体的に生徒が不安を感じ、相談をしてくるのは大きく2つのパターンに分けられます。それは「進路の変更」「受験校・科目の変更」です。今回はこの2つのパターンについてそれぞれ見ていきたいと思います。
もちろん、当たり前ですが生徒に映像授業を見せていればそれだけで成績が向上したり、入試に合格したりするわけではありません。講師が目の前にいない分自立して勉強する姿勢が必要ですし、これまでと同様、授業を受けるだけでなく手を動かして問題を解く時間は必要です。
そうすると学校の現場では、あくまでこれまでと同じ授業が中心の存在として君臨しており、映像授業の使われ方は「復習を映像でやっておく」「やりたい生徒だけが見ておく」といった状況に陥りがちです。確かに映像授業そのものは利便性が高いので、あらゆる用途に活用できるが故に「普段の授業のサポート」として利用される場面が多いでしょう。
理想的な活用方法
しかしながら現実的には映像授業が普段の授業のサポートとして活躍している場面はかなり限定的だと言えます。そもそも復習を映像授業でしなければならない生徒、つまり比較的学習が遅れてしまっている生徒は映像を見ただけでは学習が進められないケースが大半です。もしくは本人の意欲が高くないので映像授業を見てすらいないという状況も容易に想定できます。
逆に学習が進んでいる生徒であっても、映像授業は種類が多いため、いつ、どの授業を受ければ良いのか判断がつかず、結局のところ塾に頼ったり、なんとなく自分が気になったところだけ映像を見たりするという本末転倒な状況が存在します。
では映像授業の効果的な使い方はどういうものなのでしょうか。いきなり結論から申し上げてしまえば、キーワードは「先取り」と「穴埋め」です。この2つのキーワードについて引き続き説明していきましょう。
先取りでの活用
映像授業の有用性はほぼこの「先取り」にあると言っても過言ではありません。意欲のある生徒や自主的に勉強を進められる生徒には、具体的に指導者から取り組むべき講座を提示し、先取りをさせるのが良いでしょう。
先取りをさせることに抵抗感のある指導者が多いことは理解をしていますが、いくら映像授業といっても先ほど述べた通り生徒が映像を見るだけで内容が完璧になったり、成績がいきなり向上したりするものではありません。
先取りをして一度勉強した内容を実際の授業の中でもう一度触れたり、課題として出された問題を解いたりする中で本当の意味で定着が図られるのが実態です。
私が経営している塾でも他社様の映像授業を活用していますが、やはり映像を見るだけでは十分な学力をつけられないこと、学習内容が完全に定着するわけではないことがたびたび実証されています。そのため映像を活用しながらも講師による個別指導を行う中で、学習内容の定着を図っています。
学習計画がきちんと立っている教育現場であれば先取りのペースや学習内容も指示しやすいので、一人ひとりの生徒の学習状況を確認して復習すべき内容を指示する使い方よりも、負担を減らすことさえできます。