【川山 竜二】社会と教育 地殻変動した1年

COVID-19、GIGAスクール、新しい学習指導要領「生きる力」(小学校:2020年度~、中学校:2021年度~、高等学校:2022年度~)の開始に、大学共通テストと2020年度は一気に教育の地殻変動が起きた1年でした。

 

社会から教育を見ること

ほかの人からどう思われているかわかりませんが筆者は一応、社会学者のはしくれです。というと「社会学者ってなにを研究するのですか?」とよく質問されます。社会学者にとってみればよくある「あるある話」ですが、改めて考えてみると難しい問題です。社会を研究するって、「社会科ですか?」。そうではありません。皮肉をこめて言えば、社会学者の数だけ社会がある、と言えるように、正直なところ「社会とは何か」明確な定義はありません。

私は社会を説明するとき、「神様」に似ていると説明します。信じる、信じないにかかわらず、頭のなかでは思い浮かべることができるけど、指さしたり、言葉で表現するのは難しい。社会も似たような感覚なのではないかなぁと思っています。そういった意味で、社会学は「社会科」よりも「哲学」や「神学(神様について考える)」に近いのかもしれません。

なぜ、社会学の話から始めたのかというと、社会というのは皆さんが考えているよりも不安定であやふやなものであることを共有したかったからです。そうすると、またそこからなぜ教育や学びに結びつくのかと思うのではないでしょうか。

 

知識と社会

私は「知識社会学」という「知識と社会」の関係性を考えることを専門にしています。教育や学びは、もちろん人格陶冶(とうや)の側面もありますが、知識を習得することも重要であることには変わりはありません。なぜ教育を受けたり学んだりするのかと言えば、より善く豊かに社会を生きていくためにほかなりません。これから生き抜いていこうとするあやふやな社会とは何かを少しでも知ることで、何を学ばなければいけないのかのヒントになるのではないでしょうか。

では、どのように教育は変わるのでしょうか。教育はある意味で社会の制度でもあります。社会学では、人を「社会化」することが教育の機能(役割)だと考えられています。これからの社会を担うために必要な知識・スキル・技能を身につけさせて社会へ送り出すこと、ということになります。社会がこれからどのように変化するのかがわかれば、それに備えた教育や学習をすることができます。

最近の社会を表す言葉として、「情報社会」はもう古くてSociety5.0(=超スマート社会)なんて言われ方をしています。情報技術やAI技術の利活用を目指した社会のことを言うそうです。しかし、少し言葉としては手垢がついていますが、私は今こそ「知識社会」の認識が必要なのではないかと考えています。

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川山 竜二(かわやま  りゅうじ)

学校法人先端教育機構
社会情報大学院大学研究科長・教授

文部科学省
持続的な産学共同人材育成システム構築事業委員
実務家教員COE 事業責任者


専門学校から予備校、大学院まで様々な現場にて教鞭を執る実績を持つ。
現在は、「社会動向と知の関係性」から専門職大学、実務家教員養成の制度設計に関する研究と助言も多数行なっている。そのなかで、リカレント教育やラーニング・ソサエティ、知識3.0を提唱。現在の関心のキーワードは、実践の理論・高度専門職業人。

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